16歳少年を殴る「中国ネット言論規制」の現実 習近平政権下で強まる言論への規制<1>

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楊君は頬を殴られたという

訪ねたのは16歳(以下、年齢は全て取材当時)の楊輝君。インタビューを始める前には、ドライヤーをかけ、しきりに髪型を気にしていた。どこにでもいそうな思春期の少年だが、この1カ月前、地元の警察に身柄拘束されるという体験をしていた。

その日、楊君は、自宅近くのカラオケスナックで、変死体が見つかった、と聞いて、興味本位で見に行った。そこで警察と遺族の小競り合いを目にした。泣き叫ぶ遺族を、野次馬が囲んでいた。

「数日経っても警察は何も調べず、遺体を放ったらかしていたと聞いたので、腹が立ってメッセージを一件書き込みました。遺族と警察がぶつかりあったりしていたので、ちょっと膨らませて、『警察は何も調べず遺族を殴っている』と書きました。でも、実際は、殴り合っていたのではなく、言い争っていただけでした」

翌日、遺族の行動はエスカレートし、数人がデモ行進をした。すると、盾や催涙弾を備えた大勢の武装警察官がやって来て、遺族らを車に押し込めて連れ去り、野次馬を追い払った。楊君はその様子を携帯電話で写真に収め、それもネット上に流した、という。

「転載が500回を超えたので拘束した」

するとその2日後、楊君は授業中に校長室に呼び出された。待っていたのは、制服と私服が2人ずつ、合わせて4人の警察官だった。「携帯電話を持っているか」と尋ねられたので、取り出して見せると、そのまま連行されてしまったという。

「頰を殴られたし、何人かは僕の頭を机に打ちつけました。何を発信したのか一文字一文字正確に話すように言われ、一文字でも間違うと殴られました」

最高人民法院の外観

――警察はあなたの行いの何が違法だったかを説明しましたか。

「僕が書いた内容が嘘だし、転載が500回を超えたので拘束した、と言われました」

実はその月の初め、最高司法機関である最高人民法院と最高人民検察院は、インターネットによる誹謗や騒乱挑発罪の構成要件について、新しい法解釈を発表していた。その一つが「デマが500回転送されたら罪になる」という、取調官が言及した新たな基準だった。

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