丸井は「百貨店」?それとも「カード会社」か? 売り場作りとビジネスモデルを大改革中
――それが、百貨店型ビジネスモデルから脱却するきっかけとなった?
当社の所有している土地建物の中で、マルイとしては業績悪化で閉鎖したが、売り上げによらずに一定の賃料が入ってくる「不動産方式」で再開したお店が3店舗あった。そのお店がだんだん黒字化してきた。市場環境を見ても、百貨店が厳しい一方で、ショッピングセンターは勢いがあった。
そこで、不動産方式へシフトすることを決心した。この方式なら、稼ぎ頭の衣料品を減らして、粗利の低い商材や飲食を増やしても、利益は確保できるからだ。
――消化仕入れモデルの百貨店は深刻な業績悪化に苦しんでいる。丸井にとっては大きな変化だったのでは?
百貨店から不動産へ変わる、という意識はあまりない。小売業としてお客様のニーズを追求していったら、業態も変化させることになった、というだけ。とても静かな変化だ。
丸井は一体、何の会社なのか?
――一方、過去に2度の最終赤字転落の元凶となったカード事業も、今や営業利益の6割を稼ぎ出すまでに成長している。
私は、取締役のころから「丸井は本業と関連しないキャッシングに参入すべきでなかった」と思っていた。だから、キャッシング事業の過払い金支払いで経営危機に陥ったのは、一種の罰であったとすら思う。
従って、キャッシングの苦戦は本業を活かせる形でカードを伸ばすチャンスだ、と捉えた。2006年には、ショッピングクレジットの「エポスカード」を作った。ありがたいことに、キャッシングの残高がどんどん下がっていくのと同時に、ショッピングがぐんと上がっていき、2014年以降はショッピングが残高も収入も上回るようになった。
――社長にとっては父親にあたる、忠雄前社長(現名誉会長)はカリスマ的なイメージを持つ。そうした姿を目指すのか。
迫力のある見た目と、事業での大成功があいまって、カリスマのイメージが醸成されたのだと思う。ただ、今はカリスマ経営者だと持続しない。
長期にわたって企業価値を守っていくためには、カリスマが一人で維持するのではなくて、経営陣を作っていかなくてはならない。しかも、全員が同じビジョンを共有していかないと。そこだけ共有できれば人材は多様でいい。私の使命は、社長として(同族経営とは)違う体制にしていくための橋渡しだと思っている。
――百貨店からショッピングセンターへ転換し、利益の過半はカードが稼ぐ。丸井は一体、何の会社なのか。
金融からは、丸井なんて金融ではないと言われ、百貨店からは百貨店ではないと言われる(笑)。まるで、イソップ童話に出てくるコウモリのようだ。ただ、金融業界はそれなりに行き詰まっていて、百貨店も2000年代以降に再編の嵐が吹き荒れ、市場縮小に歯止めがかからない。よい意味での「どっちつかず」さが、今まで単独で生き残ってきた秘訣かもしれない。
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