三菱商事の前年度(2016年3月期)の決算報告は、ある意味、衝撃的だった。というのも、三菱商事が初の連結純損失に転落したからだ。最終赤字額は1494億円にも上った。この巨大商社グループの赤字転落は、さらに大手商社の順位にも影響をもたらし、伊藤忠商事がトップに躍り出た。
三菱商事はバランスが良い事業構成比率で知られている。直近決算では情報が公表されていないので2015年3月期のデータとなるが、同社の「統合報告書2015」に記載されているセグメント別の売上高構成比を見てみると、三菱商事は生活産業が全体の約3割、化学品と機械も合わせて約3割で、鉄鋼・金属・エネルギーの一本足打法にはなっていなかった。
むしろ、安定した成果を望める部門の構成比率は高い。しかし、いや、だからこそ、ここに三菱商事が本気で食品や小売、コンビニをテコ入れしなければならなかった理由がある。
三菱商事・ローソン体制の進む道は安泰か
しかし子会社化したからといって、競合他社も待ち構えている。ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(サークルKサンクス)が統合したため、業界では順位変動が起きている。かつて2位だったローソンは、彼ら連合から抜き去られ、主要地域で首位の座も奪われた。セブン-イレブンが2万店に近づこうとするなか、ローソンは1万3000店弱と縮まらない。
ローソンが夕方から夜のお客を獲得するために、さまざまな施策を打たねばならないだろう。私のまわりでも、セブン-イレブンのお弁当が美味しいという評価はやはり揺るがない。その状況に対し、どれだけ訴求力の高い商品を投入できるか。
ローソンはワンストップショッピングを目指している。ワンストップショッピングとは、その一店にだけ行けばあらゆる商品を購入でき、生活全体をサポートしてくれることだ。そのためには、個々の商品の競争力向上から、さらにはスーパーマーケットに負けない価格訴求が必要だろう。一部の商品はスーパーマーケット並みに下げているが、まだスーパーマーケットに対して全面的な勝利をおさめていない。
そこに、狙いどおり三菱商事とのタッグによって強力な商品ラインナップを創ることができるか。なによりもコンビニの魅力は個々商品の魅力だ。そこで思い描くシナジーが発揮できるか注目したい。
三菱商事の子会社化を発表する会見の場で、前社長の玉塚元一さんは、自身が三菱商事出身ではないため、三菱商事が自分に遠慮していると感じていたという。言葉は悪いが、社長人事や出資比率の変更など、あえて三菱商事「色」を出すことで、ローソンが三菱商事をフル活用することを目指す。
そして、さっそくその効果の片鱗も見える。たとえば、三菱商事・ローソン連合は、三菱食品との連携も加速している。三菱食品は、ローソンの竹増さんと同じく三菱商事出身の森山透さんが社長だ。ここでも三菱商事人脈が活用されている。
ということは、この子会社化は、三菱商事人脈の瀰漫化ということもできる。つまり、三菱商事出身者が中心となり、業界への復讐と勝利を誓い、意地とプライドをかけた闘いが幕を切って落とされたのだ。
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