「張り紙」は憲法を理解するための良い素材だ

困っている人のために憲法は何をできるか

張り紙は憲法理解のための良い素材(写真:Graphs / PIXTA)

張り紙は憲法理解のための良い素材

1)張り紙から過去が見える

ここ数年、かつてなく憲法に注目が集まっており、私も、しばしばテレビやラジオの出演依頼を受ける。

報道機関で印象的なのは、セキュリティの厳しさだ。「社員証は必ず携行しましょう」といった張り紙をよく目にする。張り紙と言えば、夜のラジオでしばしば声をかけて頂く某局のトイレには、他局では見ないユニークな張り紙がある。「居眠りは止めましょう」と書かれているのだ。居眠りの常習犯がいたに違いない。

「憲法学者がなぜ張り紙の話など始めるのだ?」といぶかしがる方もいるかもしれない。しかし、張り紙は憲法理解のための良い素材だ。

2)憲法って何ですか?

仕事柄、よく「憲法って何ですか?」と聞かれる。答えかたはいろいろあるが、私は、「国家権力がしでかした失敗への反省から作られた張り紙のようなものだ」と説明することにしている。

歴史を振り返れば、国家権力は、気に入らない人間を弾圧したり、独裁をしたり、あるいは無謀な戦争をしたりして、国内や国外の人々を困らせてきた。そうした失敗を繰り返さないようにするには、人権を保障しましょう、権力を分立しましょう、軍事権を行使するには慎重な手続きを経ましょう、などといったルールをあらかじめ定めておくのが有効だ。このような構想を立憲主義という。過去にトイレでの居眠りが多かったので、それを防ぐために張り紙をしよう、というのと同じ発想だ。

立憲主義に基づき制定された憲法が機能すれば、人権は保障され、権力は濫用されにくくなる。無謀な戦争も起きにくくなる。憲法は、国民からのそうした期待を一身に背負い、その活躍が待たれているはずだ。

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