ツイッター創業者、新ビジネスと起業を語る 新世代リーダー ジャック・ドーシー

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起業には強い目的意識と世界を変えたいという野望が必要

――これは新興企業を取材するときはお約束なので聞きますが、今後上場する計画はありますか。

それは記者に聞かれたときだけ考えるね(笑)。確かに多くの企業はIPO(新規上場)がゴールだと考えているが、僕らにとってもっとも大切なのは、仮に上場することになったときに健全な事業が出来上がっていて、市場の声に惑わされないようにすることだ。スクエアはいまだものすごい大きな問題の解決に挑戦しているスタートアップの精神を失っていない。もし、そのときがくれば考えるかもしれないが、市場のタイミングというのもあるからね。

――ネットや技術の進化で昔に比べて誰でも起業しやすくなったと言われます。

いや、加速はしたとは思うが、基本はまったく変わっていないと思う。父は僕が19歳のときにピザレストランを始めたが、僕は今、それとまったく同じことをスクエアでやっている。そのスピードが若干速まっただけだ。

確かに技術革新が進んだことによって、より早く簡単に起業できるようになったかもしれないが、逆に情報が増えすぎたことで、より多くの選択肢の中から正しい判断をしなければならないようにもなった。ツイッターを使えば、顧客が自社製品について何が好きで何が嫌いかを探ることができ、それを製品開発に生かすことができるようにはなった。しかし、それ以外はビジネスの定義は昔からまったく変わっていないと思う。

――成功する会社を作る秘訣は何でしょうか。

これをすれば成功する、という絶対的な要素はない。ただ、起業家には強い目的意識や、自分がこの世界で何をしているのかを把握することが必要になる。加えて、何があっても事業を作り上げるために牛のように闘うという強い野望も必要だ。会社を成功させるにはものすごく働かないといけないし、そのハードワークが終ることはない。いったん止まってしまったらビジネスはなくなってしまう。大事なのは、自分がこの世界で何をできるか、そしてそれを可能にする労働倫理と欲望だ。

何かを作るってことはそれだけで難しい。毎日がチャレンジだ。ビジネスを起こすのは、ローラーコースターのようなもの。すべてがものすごくうまくいっているハイポイントがあれば、急に成長がとまってどうするものかと考えたり……すばらしい気持ちだよ。

――たとえば、1年後の利用者をこれくらいに増やしたい、といった目標値はありますか。

数字のことは考えない。人々が夢中になる製品を開発すれば、結果は後からついてくるだろう。スクエアの利用者を1億人に増やしたい、と宣言して、実際1億人に増やす方法はいくらだってある。ただ、そうやって利用者を獲得したところでリピーターにはなってもらえない。そういう人たちは、僕たちのサービス向上につながる人々ではないかもしれない。それよりもむしろ、僕たちは利用者が自発的に使いたくなるような、愛されるサービスを作って利用者を増やしていきたい。そのためには僕たちは一段と商品開発に力を入れないといけないし、そのほうが将来的に会社にとってもよいと考えている。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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