日本株がしばらく上昇も下落もしにくい理由 偏見を持たず割り切って投資することが大切

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 日銀のETF(上場投資信託)購入増額もあり、8月以降株価は底堅くなりましたが、それはPERの水準からも明らかです。合計の欄のカッコ内は8~9月の合計ですが、この2カ月は営業日の9割弱が13.75~14.50倍のPERの範囲内に収まっています。

6~7月の平均PERの13.47倍に対し、8~9月は13.96倍へと約0.5倍かさ上げされています。足元の利益水準からは600円弱株価が底上げされたことになります。

減収減益ではPER拡大は厳しい

9月21日の日経平均株価ベースのPERは14.28倍で、逆算するとEPSは1177円になります。このEPSの水準は2016年度予想をベースに算出するようになってからは最低水準です。上場企業の業績は2015年10~12月期から3四半期連続で減収かつ経常減益が続いています。足元では数%の減収、二ケタの経常減益になっており、7~9月期も同様の状況が予想されます。

株価はEPSとPERの積で表されます。EPSは企業業績の見通しから年内に増加に転じる見通しはありません。株価が上昇するにはもう一つの要素であるPERの拡大に頼る以外にありませんが、売上高が伸びない、経常利益が減少する環境下ではPERの拡大は考えにくいところです。

割安な株価の修正からPERは0.5倍ほど上方にシフトし、現在のPERは13.75~14.50倍の範囲にありますが、ここからのPERの拡大は大きくはないと思われます。業績に増益転換予想が出てくるまでは下値は堅いが上値も重いという展開が続くと予想されます。

7月8日に安値を付けて以降の株価の「天底」の日数を見たのが下表です。

  底   天井   底   天井  底   天井    底   天井
  7/08      7/21      8/03    8/12   8/26     9/06   9/15   ?
   ↑8日  ↓9日 ↑6日 ↓10日 ↑7日    ↓7日

 ここ2カ月半で株価の騰落が3循環起こっています。いずれの騰落の日数も10日以内で終わっています。要は、(土日を入れれば)「2週間が持続の限界」ということになります。

上昇の平均は7日で、下落の平均は9日です。トレンドが出ない相場の典型的な動きで、下値も堅いが、上値も重いという表現になります。ファンダメンタルズに改善の兆しが出るまでは短い周期での上げ・下げが続くと割り切って投資に臨みたいと思います。
 

荒野 浩 マーケット・アナリスト

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あらの ひろし

あらの ひろし 1971年日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社後、調査部でアナリスト業務に従事。米国勤務を挟み一貫して、日本株の情報・市場分析を行う。1996年に朝日投信委託(現みずほ投信投資顧問)に転籍、調査部長・運用部長を経て、常務取締役投信運用本部長を歴任。 2012年に退職。その後はTV,ラジオ出演などで活動。日本株を中心とした市場分析の経験は約45年に及ぶ。投資Salon「荒野浩のテクニカル・ルームから」は、独立系アナリストのメルマガとして、国内最大規模を誇る。

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