井手:ある地域だけに建物や組織を作ると周辺地域が文句を言いますから、総花的に、まんべんなく作っていたわけです。郵便局でも農協でも学校でも、全国の隅々に作ることができた。だから対立せずに済んだし、働いただけおカネも増えていったから、みんながハッピーでした。
木本:貯金もできるし。
井手:それが大事なんです。貯金ができると自分でなんとかできる。子どもを塾に行かせる、歳をとった時や病気の備え、家を買うなど、すべて自分の貯金があるならなんとかなる。だからみんな必死に貯金していたわけです。
木本:親、祖父の世代を見てきた40代の僕らからすると、貯金していくのは当たり前でしたね。
景気が傾いたことで昔ながらの分断性が甦った
井手:僕らの世代まではそうですよね。ただ、若い世代は、一生懸命働いても給料は上がらないし、非正規雇用化も進んだ。貯金したくてもできない。でも上の世代、特に高齢者世代は、貯金があって、年金ももらえていいなという感覚。
木本:若者は公共事業などで、おカネが回って潤っていた時代を知らないわけですね。
井手:経済が成長するっていうこと自体を知らない世代です。
木本:物心ついた時はインフラが出来上がってしまっていて、そこには仕事がない、じゃあどうする? という時代がスタート地点なんですね。
井手:未来への不安がある。仕事はあるのか、正規社員になれるのか、貯金できるのかと、おびえている。それでいてなんでオレたちから税金を取るんだ、という思いがある。
分断の話に戻りますが、景気が傾き始めると全部がストップしてしまう。所得は増えないし、貯金できないし、あちこちで作っていたハコモノも、政府の借金が多くなりできなくなった。そうすると歴史が逆回転し始めて、予算を削ることが主になってしまう。何が無駄で、誰から税金を取るかという方向に。そうすると、昔ながらの分断性がよみがえってくる。
木本:隠れていた「性格のよくない」部分が出てきたと。
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