フクシマ氏「大統領選は最後まで混戦が続く」 ヒラリー支持率が急降下した要因とは?
第3に、1人の候補者の勝利が確実とするより、接戦だとレポートする方が、すべての関係者にとって有利になると考えられる。最有力候補は、彼ないし彼女が必ず勝つという印象を与えると、資金提供者が減ったり、「自分が投票しなくても勝つだろう」と投票しない人が出てくるからだ。一方、追いかける候補者は、資金提供者と潜在的有権者をつなぎとめるために、僅差のレースだと認識されることを好む。そしてメディアも、高視聴率を維持するために、「接戦」との印象を与えようとする。
第4に、9月上旬の2つの出来事がクリントンの支持率を下げることに繋がった。一つは、9日のニューヨークの支援者会合での演説。クリントンはこの中で、「おおざっぱに言えば、トランプ支援者の半分は私が『嘆かわしい人々』と呼んでも良い人々です。つまり、人種差別主義で、性差別主義で、同性愛嫌悪、外国人恐怖症、イスラム恐怖症...このような人々の中には救いようのない人もいますが、ありがたいことに彼らは「本来のアメリカ」を代表する人々ではありません」 と発言。
このコメントが批判されたことを受け、クリントンは翌日「『半分』と言ったことに後悔しています」と述べた。しかし、彼女は、トランプの支持者の中には、「嘆かわしく」て、「救いようのない」人々もいると考えているようだ。実際、彼女がこの話をした会合は、自身の強力な支援者であるLGBTグループであったため、クリントンは油断して、後から後悔するような発言をしてしまい、その姿がビデオに収められてしまうこととなった。
彼女のコメントは、彼女がエリート主義で、特権階級に属していて、現状維持を求め、一般の人を見下す「エスタブリッシュメント」 の一員であるとのトランプ陣営による批判を許すことになった。トランプ自身も、彼女の発言は「普通のアメリカ人を軽蔑している」ことを示しているとして批判した。
健康問題の影響
5つ目、もう一つ、支持率を下げる原因となったのが、クリントンの「健康問題」である。11日、彼女は9.11同時多発テロ15周年の記念式典に一時間半参加したが、予定より早めに退席。車に乗り込もうとした時につまづき、倒れそうになってシークレットサービスの手を借りる姿が、アマチュアのカメラマンによりビデオに収められた。その後、2日前に医師から肺炎との診断を受けたことが判明。この出来事は、クリントンが深刻な健康問題を隠しているという以前からのトランプらの主張を蒸し返すきっかけとなってしまった。
クリントン支持者でさえも、彼女が肺炎を患っていた事実を式典前に明らかにしなかったとこれを非難した。クリントンは肺炎がそれほど深刻だとは思わなかったため、公表したり、キャンペーンのスケジュールを変更する必要性があるとは考えていなかったと説明した。が、彼女の「閉じた秘密主義」という「大衆から事実を隠そうとする政治家」というイメージは、この事件によって印象付けられることとなってしまった。
今年の大統領選挙の珍しい特徴の一つは、2大政党の両候補者が、信頼性と好感度共に低い評価であるということだ。
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