「為替90円台、日経平均1万4000円」の現実味 株価下落を嫌った日米中央銀行が払う「ツケ」

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今後の追加緩和手段としては、マイナス金利政策の強化や長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大や資金供給量の拡大ペースの加速などを挙げている。

さらにマイナス金利の深掘りを追加緩和の軸に据える考えを初めて明確に示している。日銀が金融政策の枠組みを変えるのは、市場に出回る国債が極端に少なくなり、資金供給量の拡大の継続が困難になっていることが背景にある。

そのため、長期金利を目標にして資金供給量を柔軟に変えられるようにした。このようにすれば、超長期金利の低下で保険や年金の運用が困難になるという状況を改善できると考えたようだ。しかし、長期金利を0%で維持することを目標にしたところで、インフレになるだろうか。また金融機関に気を使ったつもりかもしれないが、マイナス金利の深掘りのリスクは残る。

円高と株安になるリスクが高まった

黒田総裁は会合後に記者会見を行ったが、とにかく見ていて苦しい会見だった。記者からもかなり厳しい質問が飛んでいた。

それはそうだろう。政策の結果が出ていない中で、事実上その延長線上の政策を推し進めるというのだから、当然である。

黒田総裁は、他の中銀に比べて大規模な金融緩和であることを強調し、効果があるとの考えを強く示したが、これまで結果が出ていないことに対する明確な説明がない。むしろ、原油安や新興国経済の懸念、消費税率の引き上げ後の消費マインドの低迷などの外的な要因がなければ、2%の物価目標は達成できたとし、責任はないとの発言には驚かされた。まさに「責任転嫁」である。

つまり、これまでの政策は間違っておらず、さらに推し進めれば必ず成功するという。根本的な間違いを修正していないのに、政策の将来の成功を誰が想定できるのだろうか。残念ながら、現在の日本において、名目金利の引き下げによる予想実質金利の引き下げをもって、住宅投資や設備投資などを活発化させ、景気回復に導くという手法は、成功しておらず、結果が出ている。

市場に訴えることで、日銀が想定するインフレ期待の高まりがもたらされると真剣に信じているのだろうか。現在の日本では、残念ながら、そのような考え方は通用しないだろう。また今回の措置は、長期金利をコントロールしようとする、きわめて大胆な発想である。中銀は短期金利を調整するのが一般的だが、とうとう長期金利にまで手を付けたことになる。これで市場の機能はマヒするのではないか。

だが、金利を動かないようにするのは、実際は難しい。また、買い入れる量は増やさないため、買い入れる国債が目標額に達せず、結果的にテーパリングになる可能性もある。そうなれば、結果としての引き締めになり、逆に金利の急伸リスクがむしろ高まる。そもそも金利の低下余地が小さいことを考えれば、金利上昇による円高リスクがむしろ高まった感がある。そうなれば、株安に向かうだけである。

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