「為替90円台、日経平均1万4000円」の現実味

株価下落を嫌った日米中央銀行が払う「ツケ」

この点において、イエレン議長が会見で興味深い発言をしている。イエレン議長は、米大統領選の共和党候補のドナルド・トランプ氏がFRBの利上げ見送りを「株高を狙うオバマ大統領の意向だ」と批判したことに関し、「金融政策の決定で政治を考慮することはない」と強調した。

その上で、「5年後に公表される議事録を読んでもらったとき、政治的意図を示すものは一切見つからないと保証する」としている。このような発言をすること自体、「見透かされた」ともいえる。

トランプ氏がFRBのスタンスを糾弾している背景には、政治と株価の関係が存在することがある。データによると、1976年以降、10回の米大統領選では、選挙直前約3カ月の株価が上昇した6回中、5回で与党候補が勝利している。逆に株価が下落した4回は全て野党候補が勝利している。株高局面で勝利した野党候補は1980年のロナルド・レーガン氏(共和党)だけである。

このようなデータから、トランプ氏がFRBの利上げ見送りによる「株高維持政策」は、オバマ大統領の入れ知恵だとするのもわからなくはない。これで大統領選前に利上げが実施されることはなくなったため、利上げによる株安が大統領選に影響することはなくなったといえる。

トランプ氏が勝利するには、26日から3回開催されるテレビ討論などで、民主党候補のクリントン氏を上回る評価を獲得するしかないのだろうか。いずれにしても、イエレン議長が政策判断は政治と関係がないと強調していること自体、腹の中では実際に相当意識しているということであろう。

今の日本株に上昇する気配は感じられず

日銀にしても、FRBにしても、中央銀行は、市場の動きを気にし過ぎているように感じられる。FRBはまだ市場にフレンドリーな政策を講じているようにみえるが、日銀は「愚策」の連発で、むしろ最近は円高・株安を自ら演出しているように見える。

その結果、市場は短時間で乱高下し、方向感がわからなくなっている。本来あるべき水準や方向が、中銀の政策と市場参加者の思惑で捻じ曲げられているように感じる。

しかし、それも長期的に見ればノイズでしかないのだろう。本欄で繰り返しているように、向かうべき方向は決まっているように思われるが、それを延命させているのがFRBであり日銀である。

今や、欧州発の銀行危機が現実のものになりつつあるとも筆者は想定するが、FRBも日銀も直接的に対応できないこうした事態がトリガー(引き金)となるのか、あるいは大統領選の予想外の混乱が市場を震撼させるのか。あるいはその両方が起きるのか。いずれにせよ、市場のリスクはまだ多く残っている。

ドル円はこれまで重要な節目の100円を維持してきたが、今回割り込んで90円台に入ると、重要な節目の決定会合の後ということもあり、これまでのような動きとは異なるパターンになる可能性があるとみている。22日に当局は円高けん制をしたものの、再び100円割れとなった時にどんな手段をとるのだろうか。

また日本株についても、多数の投資家の目安となる日経平均についてみれば、今回の日銀の発表後の株高でも1万7000円以上のコールオプション(あらかじめ決められた価格で買う権利の売買)がほとんど動かなかった。

つまり、これは、いま市場では上値を買う意欲はほとんどないことを意味している。今回もドル円は日銀の想定外の動きになったようだが、本来調整があってしかるべき日本株をETF(上場投資信託)買いで支えるのにも限界がある。

日本企業の利益水準などから見ても、100円のドル円水準で正当化できる日経平均の水準は1万4000円であると筆者は想定しているが、そのことを再認識しつつ、今後の展開を見ていきたいと考える。

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