ここには米国同様、大企業、ベンチャー、クリエーター、個人、学生、などさまざまな人達が集まり、まさに大人の工作室の雰囲気です。富士通が最新のICTのサポートをする他、大企業が素材や技術を提供してのハッカソン、ベンチャー企業の新製品ローンチイベント、地方の伝統技術体験、仮想現実(VR)ワークショップ、中高生向けAI・IoT・ものづくりサマースクールなど、イベントも多数開催しています。
有坂庄一社長は次のように言います。「米国においてTechShopは、その街で一番クリエーティブな人達が集まる場所を目指しています。東京でも同様で、この赤坂・六本木エリアの街づくりと一体となって誰もが創造力を発揮する場所にしたい。多様な人々が集まって化学反応が起こる。米国ではこれによって携帯端末決済サービスの『Square』のような新しいビジネスが100以上生まれています」。
TechShop Tokyoでは機器の使い方からアイデアの実現方法を一緒に考えるドリームコンサルタントを配置し、多様な人が交流する中で新しいものが生まれる場作りをしています。その近隣には、有力ベンチャーキャピタル4社の集まるKaleidoWorksや、WIREDとライゾマティクスがプロデュースするリサーチ、教育、実験の場WIRED Lab.などもあり、新しい時代の息吹を感じさせる刺激的なエリアとなっています。
「ものづくり」だけでなく「ネットワークづくり」を支援
3Dプリンタの登場に端を発するメーカーズ・ムーブメントで、技術者だけでなく幅広い人がものづくりに取り組む気運が高まりました。そして、今、データ収集・処理能力の向上を背景に、デジタル化の波が急速に進んで、リアルとデジタルの世界をつなげるIoTが注目されています。その中で、ものづくりの価値が再度、見直されてきているのです。
一方、時代の変化の中で、ものづくりに大きな課題が出てきていることも確かです。「質の良いものをつくる」「高機能のものをつくる」ことだけで、売り上げや利益が上がり、事業を継続できる、というこれまでの勝ちパターンがむずかしくなっています。顧客のニーズが多様化して、多くの受注を持続的に獲得することが難しくなり、また、世界中に競合がいて、顧客獲得にしのぎを削る国際競争が激化しているからです。ものづくりを続けるためには、持続可能な収益モデルの確立が求められています。
そのために、企画の初期段階で、ビジネスモデルを構想する、デザインやマーケティングを考えることがますます重要となります。また、それにあわせ資金調達も、VC投資、銀行融資、クラウドファンディングなど適したものを選ぶことになります。成長する企業であれば、ある段階で大企業との事業提携も検討しなければなりません。
FabCafeの川井敏昌COOは「プロデューサーがものづくりには必要です。作るだけでなく、売れる数を読める人が重要」と強調します。
DMM.make AKIBA、TechShop Tokyo、FabCafeでは、新しいものづくり支援のカタチとして、プロデューサー、デザイナー、強力な営業部隊、大企業とのつながりなど、ものづくりとビジネスをつなげる人的ネットワークを提供しています。ものづくりの人と、ビジネスをつくる人のチームで、新しいものづくりが強化されます。この支援は、ものづくりの課題を解決する新しいアプローチとして、大いに期待できると考えています。
経済産業省でも、IoT推進ラボを中心に、ものづくりスタートアップを応援しています。優良企業の表彰、モデルケースの支援、地方自治体と連携した地方版IoT推進などです。また、日本のものづくりの良いところを引き出し、海外に販路を拡大するMore Than Projectや、各地の優良な商品を世界にPRするThe Wonder 500など、ものづくりが継続的に利益を上げられることを目指したさまざまな施策を展開しています。
日本の得意とするものづくりをベースとして、しっかりとしたビジネスモデルを持ったスタートアップの台頭を目指す。産業や暮らしを巻き込んだ大きな変化の中での、新しいものづくり確立への動きを、今後とも積極的に応援していきたいと考えています。
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