ソフトバンク流「スマホ消費者金融」の舞台裏 みずほと合弁、AIで融資基準が緩和される?
ソフトバンクの持ち株会社・ソフトバンクグループの孫正義社長は、「ソフトバンクは携帯端末販売に割賦販売を導入した『フィンテック(金融とITの融合)第1号の会社』。割賦販売導入時には500億~600億円損したがそこから学んだことは大きい。出資先のフィンテック会社・米SoFi(ソーファイ)には3年で1兆円の貸付実績がある。SoFiの貸倒率は1%をはるかに下回る。フィンテックによって、日本でも(そのような低リスクの消費者金融が)当然出来るのではないか」と力強く語った。
孫社長は同日の会見でSoFiの成功ストーリーの説明に多くの時間を割いた。だが、「SoFiのノウハウを直接活かすわけではない」と孫社長は明言している。孫社長によれば、SoFiは米名門大学・スタンフォード大の卒業生で多額の学資ローンを抱える者の借り換え需要をとらえて、貸出実績を伸ばしてきた。今回の新会社はそのような高学歴の債務者を主な対象にするわけではない。
3メガバンクグループの中で、みずほは唯一、傘下に大手消費者金融を持っていない。三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループが大手消費者金融を次々と傘下に収めた際、「提携効果が見込めない」として、大手消費者金融の買収に名乗りを上げなかった。消費者金融が傘下にないので、新会社がグループ内で重複することはなさそうだ。銀行カードローンはあるが、最大限度は1000万円で金利は1ケタ台と低いので、おそらく今回想定しているスマホで融資を申し込む若者層とは、ほぼかぶらない。
みずほ銀行は本業と競合する可能性も
逆に、孫社長や佐藤社長が言うように、合弁会社がローコストで低リスクの融資を実現するならば、いずれはみずほ銀行の本業とカニバリゼーション(共食い現象)を起こす可能性もある。事実、孫社長は「SOFiは住宅ローンをやっている。合弁会社でも住宅ローンをいずれやりたい」とまで言っている。
みずほにとって大口融資先でもあるソフトバンクグループとの提携強化は、両刃の剣という側面もある。英ARMホールディングス買収でソフトバンクに1兆円の融資をしたのは、ほかならぬみずほである。ソフトバンクは6月末の有利子負債が12.3兆円もある。孫社長は中国アリババ株などの含み益を加味すれば実質無借金だと主張し続けているが、有利子負債の大きさに着目すれば、銀行にとってToo big to fail(大きすぎて潰せない)の融資先と見ることもできる。
「一生懸命人生を頑張る人の夢の実現を応援したい」(佐藤社長)、「一人一人の夢と目標をサポートしたい」(孫社長)と、両社長は若者を意識し、新事業の社会的意義を強く訴えた。はたして、両社長の言うような若者の夢実現を支援するものとなるのだろうか。
(撮影:大澤 誠)
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