7月に就任した英国のメイ新首相の前途には大きな壁が立ちはだかっている。それは英国民が選択したブレグジット(EU〈欧州連合〉からの離脱)の要求に応えることであり、その負の影響をなるべく抑えることである。メイ首相は賢明でタフさも備え、社会奉仕の意識も高い。私が知るかぎり与党保守党に敵は少なく、国民からの人気も高い。彼女ならこの難局を乗り越えられると信じている。
メイ首相はこれまでEU離脱の撤回を明確に否定してきた。「離脱するといったら離脱する」。そう何度も強調するメイ首相に閣僚も同調している。英国はブレグジットに向けて着々と動きだしている。
不明瞭な「ブレグジット」の定義
だが、メイ首相は「ブレグジット」が何を意味するのか、その定義をまだ明確にしていない。今後の一番の課題はそこにある。
ブレグジットといっても英国内には外国人労働者の流入制限に対して強い関心を持つ人もいれば、欧州単一市場へのアクセスをどう維持するかに主眼を置く人もいる。
その定義を明確にしないまま離脱交渉に臨んでも、得るものは乏しいだろう。EU加盟国はおのおのに政治的および経済的な利害があり、どの国もそれを保護したいと望んでいる。EUや加盟各国が自身に見返りのないまま離脱の恩恵だけを提供してくれることはないはずだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら