横須賀が横浜や鎌倉と並ぶような日は来るか 転出超過ワースト2位の市が挑む人口増加策
こうした中、吉田市長が観光人口増加の切り札とするのがヨコスカバレーの「観光人口増加ユニット」だ。このユニットを率いる土屋健司氏は、地方創生のコンサルティングや移動販売車のレンタル事業などを手掛けていて、各地の観光施策についても明るい。横須賀の観光については、SNSとの連動やインバウンド対応の遅れなどを問題視しており、これについては、地元留学生の外国人目線を取り入れ、SNSを活用した外国語での観光情報発信を計画中。また、Wi-FiとIPカメラを設置して観光客の属性情報などのデータを集め、今後の観光施策に役立てる検討も進んでいる。
インバウンドという最大のチャンス到来
もう一つ、吉田市長が力を入れるのが、「三浦半島サミット」。これは、三浦半島4市1町(横須賀市・葉山町・鎌倉市・逗子市・三浦市)の市長・町長が定期的にサミットを開き、三浦半島が持つ自然環境や観光資源、利便性などそれぞれの地域の強みを生かした連携を進める取り組みで、「行政区分を超えて人の流れを構築することで、三浦半島全体の観光人口を増加させる」(吉田市長)ことが目的だ。
たとえば、これまで鎌倉は日帰りで訪れる人が多かったが、少し足を伸ばして三浦半島で宿泊してもらえば、観光産業が潤うだけでなく、鎌倉周辺の渋滞の緩和も期待できる。生活者と旅行者双方がウィン・ウィンの関係を構築することによって、「住みよい街」が「訪れたい街」になるという。
一方、今後大きな需要増を見込めそうなのがインバウンド観光だ。羽田から1時間弱という立地の良さに加え、横須賀には米海軍の施設があり、約1万5000人も外国人が住んでいると言われる。英語メニューがあるだけでなく、ドル決済できる店もある。
すでに外国人に「慣れている」横須賀にとって、インバウンド観光の増加は最大のチャンスと言っても過言ではない。ただ、ここで重要になるのは日本人ではなく、外国人客が訪れたくなるような「魅力的なストーリー」である。特にインバウンドで大きな割合を占めるアジアからの集客については、まだ十分な施策がなされていないといっていい。
では実際に横須賀を訪れた外国人はどのようなスポットを楽しんでいるのだろうか。横須賀を旅したタイ人に聞いたところ、こいのぼりが泳ぐ風景やゴジラのすべり台、安くておいしかったマグロ丼などが印象に残ったと写真を見せてくれた。軍港巡りや海軍カレーなど日本人には人気が高い観光コンテンツより、こうした日本らしい風景やSNSで共有したくなるようなユニークなスポットへの関心が高いようだ。
日本人に人気の観光資源をそのまま外国人に提案しても魅力が伝わらないことがある一方、地元の人にとっては何気ない「日常」が外国人から人気を集めることは、インバウンド観光ではよくあることだ。おそらく横須賀には、まだ外国人から人気を得られそうな、隠れたコンテンツがあちこちに眠っていることだろう。それらを発掘するだけでなく、外国人に合ったストーリーを発信できるかどうかが、今後インバウンド客を増やすカギとなる。
まずはIT企業の誘致などによって労働人口を増やしつつ、観光客数の底上げを図る。将来的には観光に訪れた国内外の若い世代が横須賀で起業したり、移住したりする可能性もあるだろう。横須賀の矢継ぎ早の取組みは、人口減に直面する多くの自治体のヒントになるかもしれない。
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