黒田日銀が導く「異次元の低金利」 市場動向を読む(債券・金利)

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とはいえ、債券市場参加者は高値警戒感を完全に払拭し、安穏としているわけではなさそうだ。本音では相場急反落のリスクにおっかなびっくりのようである。過去に幾度か、長期金利が0%台になると、債券バブル崩壊の憂き目にあい、長期金利の急反騰という事態が起きたからだ。ここで、その代表例を振り返って留意点を抽出し、万が一に備えよう。

過去には需給悪化懸念が、高値警戒感を呼び覚ます

古今東西、バブル崩壊のトリガーは“高値警戒感の再燃”である。きっかけは往々にして些細だ。2003年6月の「VaR(Value at Risk)ショック」と称される債券バブル崩壊のそもそもの発端も、20年利付国債入札(同月17日)の落札結果が事前の強気予想よりも少々弱かったことだった。VaRすなわち銀行のリスク管理手法が真犯人ではない。

落札結果を機に需給相場への過信に陰りが差し、金融システム不安を背景とする「質への逃避」や政府・日銀による国債管理政策への期待によって封印されていた高値警戒感が再燃。すると、当初はさざ波程度だったヘッジ売りや利益確定売りが、ほどなく損失覚悟の持ち高調整売りという大波へと発展した。そこで、VaRが自縄自縛の「売りが売りを呼ぶ展開」に拍車をかけたのだった。

それまでは債券市場の目に盤石と映っていた需給相場もあえなく自壊。同年6月中旬に0.40%台だった長期金利は、7月4日には瞬間的に1.40%まで急騰を強いられた。

ちなみに、長期金利はその後、値ごろ感からの押し目買いを受け、8月中旬には0.80%台まで低下した。ところが、そこで福井日銀が量的緩和解除のチャンスを探っているとの疑心暗鬼が蔓延し始めたため、高値警戒感の再燃を背景に「売りが売りを呼ぶ展開」が再発し、9月初旬にかけて1.60%台への上昇・第2波を強いられたのだった。

次ページ1998年の資金運用部ショックによる金利急騰
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