電子の世界をも襲う、二極化の負のループ
電子書籍は、こうした「二極化の負の循環」から脱出する選択肢として、期待される面がありました。ですがこの点については、電子書籍は今のところむしろ紙の本より過激です。
電子書籍が並べられるのは書店の店頭ではなくランキング。ランキングに入らない作品は、店頭に流通しないのと同じで非常に厳しい。だから二極化は激しくなるわけで、電子書籍で大きく扱われるのは、もともと紙の本でベストセラーだったものや映像化作品など、商品力のあるタイトルに集中する傾向があります。
そのため現場では「電子書籍がビジネスとして成立するかどうかは聞く人によって答えがぜんぜん違う」などとも言われています。
成功した人はいいが、売れない場合は紙以上に売れない。結果的にその感触の〝格差〟も大きくなる。こうした傾向は、大手出版社からの作品供給が増える今後は、より顕在化していくことでしょう。
その一方、個人的に面白く感じるのはアップルが展開するNewsstandの仕組み。これは雑誌の定期購読に当たるようなスキームを電子で実現するものなのですが、アメリカの媒体には配信の軸足をこちらに移すものが出てきています。
現代では雑誌の売れ行きが厳しい。これがまた出版分野の二極化を促進する理由となっていますが、それには根底に「現代では無記名の法人の意見よりも、影響力のある個人の意見や、レビューサイトのような個人の感想の蓄積がより信頼される」という構造的な原因があると考えられていました。
しかし新しいスキームがあれば、新たな購読習慣が生まれて雑誌もまだまだ売れるのかもしれません。
Amazonにしろアップルにしろ個人でも商業出版が可能なプラットフォームを備えています。たとえば人気ライブハウスなどは、けっこうな部数のフリーペーパーを作っていたりしますが、こうした仕組みを使えば、さらに配信範囲を広げることができます。将来的にはきっと意外な使い方が広がっていくはずだと思います。
【初出:2013.3.30「週刊東洋経済(最新スマホ活用術)」】
(担当者通信欄)
紙の本の世界は、ずいぶん前から両極端になってしまっているのが現状ですが、実は電子書籍の世界も同じこと。確かに、WEB検索だってトップに表示されるものしか見ない、人気商品としてランキングに載るものが気になるとくれば、無理のないことなのかもしれません。仕事でも、スーパーマンは大丈夫、単純労働も消えはしない、でも中くらいのスキルでもって働く人は、なにかに代替されてしまいやすい。そんな話をよく聞きます。なにかと中間層に厳しい時代の閉塞感、それを打破するかもしれない芽に注目です。
さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2013年4月1日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、給料大格差時代)」で読めます!
【日本は中二的発想力で勝負せよ!】
高付加価値商品を作れ!そういわれたときに「冷蔵庫に空気清浄機能をつけよう」と、文字通りの「付加」に走る愚直さでは、もう勝てない。成熟期に入った国だからこそ思春期的な空想力が生きる?
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