10年ほど前まで、採用活動において、私が外国の大学生と会う機会はほとんどありませんでした。しかし、この10年で状況は一変しました。著しい経済発展とともに、アジア圏でも大学進学率が急上昇し、就職市場に流れ込んでくる「大卒」者の数が激増したのです。その結果、今では中国やインド、韓国などの大学生とも競合するようになりました。
日本人同士だけで競争していた時代は、全員が大学時代に勉強していなかったのですから、「大学生は勉強なんかしなくてもいい」と言えたのです。競争条件が一緒だったからです。
でも、4年間みっちりと知的能力を育成されている海外の大学生とも競争しなければならなくなった今は、状況が違います。たとえポテンシャルでは勝っていたとしても、知的能力が最も伸びる10代後半から20代前半の4年間のハンデはあまりにも大きすぎます。
このハンデがあるため、冒頭で述べたように、採用担当者には「海外の学生は、優秀だ」と見えてしまうのです。
「勉強しない大学生」は日本の国力を落とす
日本の大学生が海外の大学生と比べて就活で不利になる、ということだけであれば、学生個人の問題と言えるかもしれません。ですが、問題はそれだけにとどまりません。
まず、学生をきちんと指導できないことがはっきりすれば、日本の大学は国際的な競争力を失うでしょう。4年という時間と、決して安くはない学費を支払ってまで大学に行くのですから、「就職できない」と思われてしまえば、日本の大学は学生に見放されてしまいます。
また、企業も無関係ではありません。
海外の学生を採用するようになってきたとはいえ、まだまだ日本企業は日本人を多く採用しています。どの国の企業でも、母国の学生をいちばん多く採用するという傾向は変わりません。その学生のレベルが、海外の学生と比べて劣っていたら……。企業同士の競争は容赦なくグローバル化しています。劣った人材を多く抱えて、海外企業に太刀打ちするのは困難でしょう。
このように「勉強しない大学生」は、日本全体の、まさに国力の問題なのです。大学生には大学生らしくきちんと勉強してもらわないと、日本という国が没落してしまうのです。
では、そもそもなぜ日本の大学生は勉強しなくなってしまったのでしょうか? 次回では、その謎について解説したいと思います。
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