個人型年金、銀行・証券の熾烈な口座獲得争い ネット証券が「超低コスト」武器に本格参入

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しかし、シンプルな二極化ですみわけが進んでいた個人型DCのコスト戦略に大きく変化が生じた。本年4月にSBI証券が発表した投資信託ラインナップの追加拡充である。

投資信託の信託報酬(運用管理費用)については相対的に割高で、ともすれば事務コストの割安メリットを打ち消すかのような投資信託ラインナップであったSBI証券が、超割安の信託報酬(運用管理費用)を示した投資信託をずらりと追加してきたのだ。日興アセットマネジメントのDCインデックスバランス(株式80)などは年0.216%の低コストである。これは業界に大きな驚きをもって迎えられた。

実は今回のDC改正法では運用商品数の上限を別途定めるとしており、商品が何百本も並ぶようなことは認めないかまえだ。むしろ法案準備段階での議論を見る限り行政は商品数を20本以下、多くても30本以下に抑えようとしており、SBI証券は今回の追加でこの商品本数上限に達する可能性が高い。新規追加した商品を数年で除外するとは考えにくいため、従来あった高コストの投資信託が除外対象となるだろう。これはかなりの「攻め」の姿勢といえる。

楽天証券が新規参入でSBIに追随

同じネット証券としてSBI証券のライバルである楽天証券は今まで個人型DCに加入していなかったが、この機をみて新規参入を果たすことを7月にプレスリリースした。ここではSBI証券と同じ「事務費用は安い」戦略を採ることを示し、SBIと同水準を提示するとした。

楽天証券は9月に改めて個人型DCの商品設計について発表を行うとしている。具体的な運用商品のリストなどはここで提示されることになるが、ライバル視しているであろうSBI証券より高い信託報酬(運用管理費用)の投資信託を並べてくるとは考えにくく「商品コストも事務費用も低い」の新規参入組となる可能性が高い。

すでに個人型DCに地歩を築いてきた運営管理機関や、2017年1月をにらんで商品の魅力の薄れていた運営管理機関は、こうした流れを受け「てこ入れ」をしてくるものとみられており、ここにも注目が集まっている。まずは「商品コストも高いし、事務費用も高い」というコスト高の個人型DCを提示してきた運営管理機関がどこまでコスト面で頑張ってくるかに注目が集まる。

また楽天証券以外の個人型DC参入にも期待が集まる。今までネット証券ではSBI証券しか参入してこなかったがマネックス証券は動くのか。あるいは投資信託販売やNISAでは積極性を出してきたネットバンクが個人型DCについては参入表明をするのかが筆者のもっかの関心事だ。

「てこ入れ」組や「新規参入」組の発表は遅くとも年内に行わなければ他社に新規顧客を奪われることになるので、9月から11月にかけては各社のプレスリリースが続くことになるだろう。今年の秋は、金融機関の個人型DCに関する発表に注目してみてはいかがだろうか。

山崎 俊輔 フィナンシャル・ウィズダム 代表 ファイナンシャルプランナー

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やまさき・しゅんすけ / Syunsuke Yamasaki

1972年生まれ。中央大学法学部卒業。企業年金研究所やFP総研を経て2001年独立。全国紙などで連載。著書に『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』など。

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