個人型年金、銀行・証券の熾烈な口座獲得争い ネット証券が「超低コスト」武器に本格参入
ところで、個人型DCには「事務手数料を顧客が実費で支払う」という他の金融商品にはみられない特徴がある。国民年金基金連合会(実施主体)、資産管理を行う信託銀行(事務委託先金融機関)、事務サービスやデータ管理を行う運営管理機関に対し、あらかじめ提示された月額費用が内枠で引かれていく仕組みだ。
個人型DCは掛金が所得控除になるため、月額1万円程度の掛金を入金さえすれば、このコストは税制メリットで相殺されるのだが、顧客視点でいえばなかなか理解が難しい。これに加え、投資信託を通じて資産運用を行えば、運用管理費用その他の投資コストが生じ、これも内枠で引かれる。
ただし、このコストは各社が自由に定めることができるので(国民年金基金連合会の費用は固定)、競争原理が働きうる。
商品、事務費とも安い組み合わせはなかった
今まで、個人型DCの戦略でみられたのは「相対的に商品コストは高くて事務費用は安い」組み合わせか「商品コストは安くて事務費用は高い」かのどちらかだ。(ちなみに「商品コストも高くて事務費用も高い」という運営管理機関も少なくないのだが、ここでは触れないでおこう)
「商品コストは高くて事務費用は安い」の代表はスルガ銀行とSBI証券で、一定の資産額(50万円以上)があれば、毎月の事務コストは167円ですむ。ただし投資信託の信託報酬(運用管理費用)は比較的割高なものが多い。仮にスルガ銀行に100万円の資産残高があって、グローバル株・債券に投資する「マイストーリー・株75」を保有しているとすると、運用コストが年1.3%、事務コストが月167円とすれば、合計で約1万5000円を支払うことになる。
「商品コストは安くて事務費用は高い」組み合わせの代表はりそな銀行や野村證券で、事務費用は月500円程度取る(高いといっても、これが業界の標準的な個人型DCの事務コストであるが)。しかし、投資信託の信託報酬(運用管理費用)については、(前述のマイストーリーと違って、インデックス型に連動するタイプではあるが)年0.25%程度で国際分散投資を可能としており、低コストの資産運用が可能となっている。仮に100万円の0.25%と月500円の事務コストとすれば8500円程度の年間コストということになる。
しかし、こうしたトータルコストの意識をもつのはちょっとした頭の体操が必要になるし、投資知識も求められる。これも個人型DCの利用者数が伸びない要因のひとつであった。
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