(第7回)「採用目線」から行う就職活動(年明け編)

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・選考開始

 外資系コンサルを筆頭にマスコミやIT業界の一部などは、年明け早々から選考がスタートする。かたや先月の4/14~16にかけて日経新聞が行ったアンケートでは、日本経団連に加盟する企業(いわゆる大手企業)に対して3月末までは実質的な選考活動を自粛する呼びかけを行ったにもかかわらず、2週間でほぼ8割の企業が内々定を出していたことがわかっている。
 回答に応じた企業は49社(日本経団連の企業会員は2008年1月22日時点で1337社)だったことを考えると、穿った見方かもしれないが「答えにくかった」会社も多数存在したのだろうと予想できる。つまり、実質的な選考は3月に進捗し、4月の声を聞くや一斉に加速するというのが本番のスケジュールだといえるわけだ。

 3月の選考で登場する社員は、これまでに接触してきたリクルーターとは経験や社内地位ともにレベルが違う。無論、質問の内容も幅が広く、かつ深くなり、皆さんの対応に対する突っ込みも鋭さを増す。
 スケジュールで埋め尽くされた手帳を見返すことも大事だが、本番の選考に登場する百戦錬磨の社員と対峙する時点では、もう一度採用ホームページや入社案内を読み返し、事業内容や社員の考え方、経営理念などを精読しておくべきだ。
 もし複数の会社で選考が進んでいる場合、そういった準備をすることによって、「入社案内に書いていることと、今までに出会った社員が言っていたことが違う」ことに気付き、その時点の志望企業の順位が入れ替わるかもしれない。
 「年内に一度読んだから」と言うなかれ。その段階のあなたは、社員と会い、面接を受けている。つまり、この時点のあなたの方が確実にその会社について詳しくなり、感情も移入しているのだ。大切なことは、「あなたの成長した目線で再度読み返す」ことだ。特に入社案内は採用活動の「社員が語る仕事を通して会社の理解度や志望度を高める"落とし込みのツール"」として位置づけられていることが多い。
 そのような人事部側の意図を"成長した目線"であらためて確認できるか、また、そのような目線をもって今一度、選考面接で質問したい(確認したい)質問が思い浮かぶか。あなたがその業界や企業に興味や関心を持ち、やりたいことを見出しているとすれば、第5回で述べた「個性」がここで出てくるはずだ。

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これから面接本番に向かう学生の皆さんへ
<ワンポイントアドバイス>


 内定を獲得した方々にはすでに連絡があったかもしれないが、内定者フォローに注力する企業が増えている。内定者フォローの持つ意味は、内定辞退の抑止が最も主たるものだが、事前の資格取得の奨励や入社後の即戦力化に向けた事前学習を義務付けるものもある。
 しかし、ほとんどすべての企業で考えているのは同期意識(ライバル意識の意味も含む)の形成だといえよう。新卒同期となる仲間と顔を会わせ、今まで知らなかった同世代の価値観や意識と自分を比較し、互いに刺激を受け、事前の学習プログラムがないにもかかわらず、自主的に勉強を始める人も少なくない。
 堅い話ばかりではなく、飲み会を頻繁に開く会社もある。
 SNSにコミュニティサイトを立ち上げることも珍しくもない。
 人事部から声を掛けられ、ついこの間、参加する立場だった自分がインターンシップのプログラムを手伝っているかもしれない。まさに内定者フォローの形態は百花繚乱なのだ。

 学生でありながら社会人を約束されたモラトリアム期間が1年にもおよぶ昨今、内定者を取材して違和感を抱くのは、つい数日前まで「御社」と口にしていた会社のことを、「うちの会社」と呼ぶ人の多さだ。敢えて申し上げれば、まだ給料を一円も貰っていないし、可能性としては外資系やファンドに買収されて入社時には社長も社名も変わっているかもしれないのに、だ。
 個人的な意見だが、自分自身で意義が見出せるものは別にして、内定者の段階で会社に尽くす義務はないと思う。「就活終了宣言」をしてもいいと思える企業から内定を貰った方は、後輩の面倒をみるのもほどほどにして、旅、恋愛、親孝行、趣味、ボランティア、スキルアップなど、学生時代にしかできないことに是非チャレンジしてほしいと思う。

八木政司(やぎ・まさし)
採用プロドットコム株式会社 企画制作部 シニアディレクター
1988年関西学院大経済学部卒。大手就職情報会社で営業、企画部門で主にメーカーの採用戦略をサポート。その後、全国の自治体の地域振興に関る各種施策や計画書の策定業務に携わり、2000年から再び企業の採用支援業務に取り組む。08年4月より現職。
採用プロドットコム株式会社 https://saiyopro.com/
佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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