コンテナ店舗で挑む上越妙高駅前改革の勝算 北陸新幹線開業2年目、人口減へ新たな解?

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フルサット店舗に灯が点る

JR東日本のデータによると、上越妙高駅の2015年度の乗車者は1日平均2086人だった。同じ北陸新幹線沿線では、長野県の佐久平駅(2530人)や上田駅(2864人)には及ばないが、定期以外の乗車数は、1996人と佐久平駅を上回っている。速達型の「かがやき」も、長野駅発着の「あさま」も止まらず、各駅停車タイプの「はくたか」の利用者に限った数字であることを考えると、まずは健闘といってよいだろう。

新幹線ウオッチを続ける地元の記者からは、興味深い指摘を聞いた。金沢発の上り「はくたか」から多数の団体客が降りる光景は、開業直後から目立っていたが、最近は特に、大阪や神戸、名古屋の人々に接する機会が増えたという。「これまで、上越市や新潟県といえば、もっぱら視線が長野や東京に向いていた。しかし、西日本とのつながりが強まっていく気配を感じる。上越妙高駅は、東西の結節点になりつつあるのかもしれない」

「かがやき」が停車する長野市や富山市、金沢市のネットワークが形成される中で、県庁所在地ではなく、都市の規模や機能も二回り小さい上越市は埋没していく恐れもある。「今のままでは、都市間競争ではまともに戦えない。直江津地区の水族館を改築するなど、上越市は今、街そのものを整え直す営みに懸命だ」と指摘する人もいた。一方で、南隣の飯山駅(長野県飯山市)一帯が、戦国期には一時、同じ上杉氏の領地だった縁もあり、県境を越えて上越地域と人的ネットワークをつくる動きが、民間ベースでは始まっている。

「等身大の空間とつながり」を構築

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上越妙高駅前の民家に掲げられた看板

上越市は2015年、市民8000人を対象にしたアンケートを実施した。集計を行った市のシンクタンク・上越市創造行政研究所によると、広大な市域の中で、地区による新幹線の利用動向を把握できた。さらには、新幹線の利用の有無にかかわらず、開業を肯定的に評価する市民が多かったという。詳細なデータを入手でき次第、検討・紹介してみたい。

整備新幹線は開業後、時間的にも空間的にも地域の姿を大きく変えていく。想定外の事態や、住民の意向に沿わない状況が発生することも珍しくない。同時に、既存の壁やしがらみ、価値観を壊し、変えていく契機ももたらす。北陸新幹線は、沿線の自治体や住民の暮らしとつながりを、どう変えていくのだろう。今なお、かつての「巨大開発型」の発展を待望する空気は各地で根強く、「駅前の開発・景観」や「快速型列車の通過」に強くこだわる地域や人々もある。

だが、上越妙高駅で平原さんが着手した「個人から始める、等身大の空間とつながりの構築」は、人口減少・高齢社会に対する、意義深い提言と実践に見える。「かがやき」に乗って通り過ぎる人々の目には映らないかもしれないが、小さくても確かな「かがやき」を、上越妙高駅前で感じた。

(写真はすべて筆者撮影)

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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