コンテナ店舗で挑む上越妙高駅前改革の勝算 北陸新幹線開業2年目、人口減へ新たな解?

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テナントの一つ、ラーメン店。コンテナと感じさせない内装だ

フルサットの名はもちろん、「ふるさと」に由来する。だが、上越妙高の風土を強く意識しながらも、運営方針は、整備新幹線の開業地域にありがちな「地元への固執」とは少し距離を置いている。当初から建築家と協働し、さらには結果的に民間単独でスタートを切った運営形態も、機能と場をフレキシブルに構築していく面で有益だという。

「人口減少や高齢化が進む中、駅前に大きな建物を建てることは必ずしも社会的な課題の打開策にならない。地方のエネルギーが低下してくれば、それに見合った手法を編み出すしかないんです。床面積や容積を優先したビルディング開発ではなく、フルサットのような、初期投資を抑えた小回りの効く手法がうまく動けば、全国のさまざまな場所で応用が利くはず。

ノウハウを蓄積して各地と共有し、ゆくゆくは、同様の『郊外立地型』の新幹線駅のネットワークをつくったり、互いの特産物を販売し合ったりするような展開を目指したい」。こんな平原さんの問題意識は、実は当初から全国の近未来に向かっていたという。地元・上越や全国各地に、フルサットの存在と活動がどう受け入れられていくか。

地元の反応は一様ではないようだ。上越妙高駅は市役所が立地する春日山地区から約8km、日本海に面した直江津地区からは約10km離れた田園地域に位置する。知人らの話を聞くと、駅前でのベンチャービジネスに懐疑的な空気や、「やはり見栄えがするビルがほしい」という声もあるという。一方で「まだ様子見のムードも漂うが、フルサットにつながれば何かしら手応えはあるはずだ」「フルサットの活動が、高田地区の町家活用の動きにつながってくれれば」といった期待感は強い。

駅がイベントやくつろぎの場に

上越妙高駅前ではほかにも、西口を中心にいくつか変化があった。慢性的に埋まっていた市営駐車場の不足を補う形で、民間の駐車場が3カ所、開設されていた。建設が進んでいたマンションは完成し、窓にいくつもの灯が見える。例年、高田地区で開かれていたビール・イベント「上越オクトーバー・フェスト」は、今年初めて上越妙高駅が会場となった。ほかにも、マンションなどの建設構想が進んでいるという。

開業時、県外客100人アンケートを実施した地元紙・新潟日報は、2年目の夏休みに合わせて上越支社の記者が行った聞き取り調査の結果を、7月22日付の紙面で報じていた。接続する並行在来線・えちごトキめき鉄道のダイヤ改正が一定の評価を得ていること、駅構内の商業・飲食機能への不満が高いにもかかわらず、フルサットの存在が駅利用者に知られていないことなどを指摘する一方、地元の高齢者にとって、駅がくつろぎの場所となり始めている様子を紹介している。

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