解雇解禁? 規制改革論に潜む“火種” 有識者会議の主張は抑制ぎみ、第1次安倍内閣の反省か

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話は6年前にさかのぼる。第一次安倍晋三内閣が発足した2007年5月のことだ。当時、労働規制の緩和を主張していた規制改革会議から出された一枚の文書が、各界に大きな波紋を巻き起こした。

「脱格差と活力をもたらす労働市場へ」。同会議の労働タクスフォースの名で出されたこの文書は、これまでの労働規制や労働市場のあり方を、いわば全面的に否定する内容だった。

労働者の権利をことごとく否定

「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は間違っている」という前提の下に、最低賃金の引き上げ、女性労働者の権利強化、正社員の解雇規制、労働時間の上限規制、労働者派遣法の直接雇用申し入れ義務などをことごとく否定した。

行政庁、労働法・労働経済研究者に対しては、「ごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い」と非難。急務の課題として、解雇権濫用法理の緩和、解雇の金銭解決の試行導入、労働者派遣の完全自由化、労働政策立案を公益側、労働側、使用者側の3者で構成される労働政策審議会から、「フェアな政策決定機関」へと移行することを求めた。

この「脱格差と活力をもたらす労働市場へ」の作成で中心となった委員は、当時こう語っていた。「たとえば最低賃金制度が効率性をゆがめる影響はあるに決まっている。影響はあるのだから制度は不要であり、世界中で導入されているのだとしたら、それは世界中が間違っている。日本だけは正すべきだ」。

解雇規制を緩和したうえ、労働者派遣を完全自由化したら「どん底への競争」になるとの主張に対しては、「それで何が悪いのか。路頭に迷うのと、せめて派遣で働けるのと、どっちがいいのですか」「市場の失敗がない以上は労働行政の役割はほとんどいらない」。これが当時の安倍政権の下で認められた労働規制改革の方向性だった。

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