東芝、早速の「上方修正」でも続く綱渡り経営 株主資本比率はまだ1ケタ台にとどまる

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東芝は、2019年3月期までに純利益の積み上げによる自助努力で、株主資本10%を目指している。ただ、これ以上の為替変動があれば目標達成は厳しくなり、今秋以降、特設注意市場銘柄の指定が解除された後に、増資などの選択肢も視野に入ってくるだろう。

とはいえ、徐々に明るい兆しも見え始めている。決算発表と同時に、今4月~9月期の業績予想を修正。期初に出した200億円の営業赤字計画から一転、300億円の営業黒字へと大幅に上方修正したのだ。円高の影響を受けているものの、フラッシュメモリにおいて中国系スマホメーカー向けの需要が徐々に回復し、売価下落の傾向が鈍化。期初の想定よりも大幅に収益が改善する見通しが立ったためだ。通期の予想は為替が不透明なことから据え置いている。

綱渡り経営はまだ続きそう

半導体の工場(三重県・四日市市)は現在フル稼働状態で、需要がひっ迫している状況だ。フラッシュメモリは、データセンター向けに今後さらなる伸びが予想され、東芝も投資の手を緩めていない。今年7月には新製造棟を本格稼働させ、徐々に生産能力を上げていく方針だ。

今年7月に本格稼働した新・第2製造棟。この棟に続き、今後隣接地にさらに工場を拡張する

だが、「予定より早いペースで投資をしているようだ」と東芝の半導体工場と取引のある会社の幹部は打ち明ける。需要が見込める今だからこそ、急ピッチで投資をしている模様だ。

第1四半期から上方修正するなど、どん底の状況からは抜け出しつつある東芝だが、依然として株主資本比率は1ケタ台と厳しい。為替や競争環境が悪化すれば、収益柱のフラッシュメモリも右肩上がりとはいかないだろう。

さらに、前期に赤字事業の切り離しや東芝メディカルシステムズなどの事業売却を行ってしまったため、もう資金になるような事業はあまり残っていない。投資も財務状況を見ながら慎重に行わなければならず、綱渡り経営は当面続きそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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