成功を続ける人は、「祝う」ことを軽視しない 43人の世界記録保持者を育てた名将の心得

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私はどうだったか? それまでの9日間、実際に泳いだわけではないのに、疲れ切っていました。そして、どうしようもなく興奮していました。マイケルが自分の仕事を済ませたように、私も自分の仕事を済ませたのです。

私たちは11年間共に進み、この瞬間に向けてがんばってきました。私が彼のプランを用意し、彼がそれをほぼ完璧に仕上げました。彼は、世界がかつて見たことのなかった最強の五輪選手となり、私は世界でもっとも幸せで満ち足りたコーチとなりました。

世界は彼を見つめていました。私に関心を持つ人はいません。だから、私はスポットライトの当たっていない席を離れ、プール近くの狭い廊下に向かいました。

達成した瞬間を「忘れられない思い出」にしよう

人影がない静かな廊下に、私は数分の間立っていました。膝から力が抜けそうでした。考えに没頭するあまり、無表情で、周りの環境も忘れて、自分に問いかけていました。「本当か? 本当に起きたことなのか? 本当にこの夢が本物になったのか?」

五輪のメダルはアスリートのためのもので、コーチのためのものではありません。それは少しもかまいませんでした。試合をするのはアスリートなのですから。

それでも何か、この瞬間の記念になるものがほしかったのです。そしていま、私はそれを手に入れました。1人だけのこの数分間が、自分への褒美でした。一瞬の間でしたが、私は廊下で自分たちの偉業に浸ることができました。そして実は、これがあらゆる目標を実現していくうえで最も大切な部分なのです。

それまで目標に向けて注いできたすべての努力とすべてのエネルギーに対する褒美として、少しでも自分に酔うことが必要なのです。

私たちが何かを達成したときには、たいてい先生や上司や親が記念品をプレゼントしてくれます。小学校の賞状、年間最優秀セールスマンの記念の盾、定年退職を祝う腕時計、最速の泳ぎをたたえる金メダル。目にしただけで自分の活躍がよみがえる思い出の品です。

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