「チルドゆうパック」、実は冷えていなかった 郵便局員が告発「保冷剤が足りていない!」

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「(長方形の)配達用保冷バッグ内の温度を確実に5度以下にするには、バッグ内の上下、左右、前後それぞれの面に計6個の保冷剤を配置する必要がありますが、温度を測ったときには保冷材は2個しか入っていませんでした。この日は、冷蔵庫から出された荷物は配達までの1時間から1時間半ほど、保冷材不足の状態のまま放置されていました」

また、こうした実態については、ここ数年、複数回にわたって上司に報告したほか、上司ら立ち合いの下で温度を測って見せたこともあったが、具体的な対策が取られることはなかったという。

日本郵便では2013年にも、チルドゆうパックなどの温度管理に不備があることが発覚。立ち入り調査の結果、荷物を取り扱う全国郵便局4835局のうち650局で、配達用保冷バッグの温度や、保冷材用冷凍庫の管理などに問題があったことが明らかになった。

これを受け、チルドゆうパックの温度管理については、全社的に是正、指導が徹底されたはずだった。そうした中で、再び発覚した「5度超え」。これらは果たして特定の郵便局に限った問題なのか。

「保冷バッグに手を入れてもヒヤリとしない」

別の保冷バッグ。こちらは15.9度を示している

取材で話を聞いてみると、別の郵便局の社員からも「保冷材の数が足りない。配達するときに保冷バッグに手を入れてもヒヤリとした感じがしない」「配達先から荷物が冷えていなかったという苦情を受けて上司に報告したことがあるが、郵便局を出発してからの扱いに問題あったとして配達員である僕個人の責任にされてしまった」「炎天下の中で配るので、お客さまに届けるときには常温になっている」といった声が聞かれた。複数の社員たちが、チルドゆうパックは日常的に5度を超えて取り扱われていると、証言したのだ。

これに対し、日本郵便広報室は「適切な温度が保たれるようマニュアルを徹底させている。保冷剤が足りない場合は速やかに申請、補充をするよう指導もしている」と反論する一方で、温度計の数値が5度を超えている写真については「温度が測られた状況にもよるが、表示された温度は適切な水準とはいえない」として、温度管理に何らかの不備があったことを認めている。現在、この郵便局での立ち入り調査を実施、温度が上がった原因や、こうした取り扱いが常態化していたのかどうかなどについて調べており、問題があると判明した場合は、全国の郵便局にあらためて注意を呼びかけるという。

また、同社では、このようにいったん温度が5度を超えた荷物は原則、配達はせずに、差出人に連絡を取り、指示を受けるようマニュアルで定めているが、今回、15.9~20.5度を示した荷物は、差出人の許可を取ることなく、そのまま配達されたという。

藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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