患者の多くは「無駄な手術」を受けていた! 一部の症状では手術のメリットがないことも
医薬品が市場に流通するには、それが安全で効果があることを示す厳密な試験にパスしなければならない。しかし、手術は違う。米食品医薬品局(FDA)は外科手術に規制を設けていない。もし手術にも臨床試験が導入され、手術を受ける患者と受けない患者を比較する試験があったらどうなるだろう。
おそらく手術が有効でないという結果が出れば、別の治療法がとられるだろう。
だが、それは臨床試験があれば、の話だ。現状では、手術がほかの治療法よりも有効だとする根拠を問うのは、患者自身に責任があるようだ。
理学療法でも手術と同じ結果
たとえば脊椎固定手術。変性した椎間板が起こす腰痛を、脊椎を固定することで軽減させる外科手術だ。この手術は多くの手術と違い、4回の臨床試験が実施された。その結果は、手術は理学療法など手術以外の治療法と効果は同じというものだった。手術を受けた被験者も受けていない被験者も、痛みは軽減するかなくなった。
この研究は2000年代初頭に実施され、手術が大幅に制限されるか廃止されるのに十分な結論が示されたと、オレゴン健康医科大学教授でEBM(科学的根拠に基づく医療)が専門のリチャード・デーヨは言う。しかし、最近の調査によるとそうはならず、反対に脊椎固定手術の件数は増加した。臨床試験はほとんど影響力がなかったのだ。
脊椎固定手術の件数が減少に転じたのは、2012年にノースカロライナ州のブルークロス(民間非営利入院費給付健康保険)が保険金の支払い対象から除外し、そのほかの保険会社もそれにならってからのことだ。「科学的な証拠だけではなく、経済的に不利な条件が生じたことが作用した」と、デーヨは言う。
臨床試験で効果に疑いがあるという結果が出ても、医療費が補償され続けている手術はある。