台湾では芸能人以上の注目度
巨大戦艦とも巨大帝国とも呼ばれるこのホンハイのトップに君臨するのが、創業者である63歳の郭台銘である。1日16時間働き、ホンハイの重要経営事項はほとんど1人で決めているという人物である。24歳年下の美人ダンスインストラクターと再婚するなど、ニュースになる経営者として、郭台銘は台湾で芸能人以上の注目を浴びている。郭台銘が現れるところには、テレビカメラの列がずらっとできる。
その郭台銘が最近、久々にメディアの前に姿を現したのが、1月中旬、ちょうど私が出張で訪れていた台北だった。
テレビの画面で見ていると、7~8メートルはあろう鉄柱が打ち込まれ、ガーン、ガーンと地響きを立てた。数百人の来賓の拍手がはじけた。その中心にいたのが、郭台銘と長男で後継者候補と目される長男の郭守正だった。郭守正はもともと経営にそれほど興味がなかったといわれる人物で、郭台銘もホンハイの幹部を競わせて後継者を育てると公言していたが、最後はやはり血族への継承を重んじるのかもしれない。
イベントはIT関連の小売専門店を集めた「台北資訊園区」の起工式で、地上12階、地下6階のビルを建設し、内部に大型のIT小売店を年末にはオープンさせるという。ポイントは、この小売店がホンハイの直系であるサイバーマート(賽博数碼広場)になるということだ。サイバーマートは現在、中国で35店舗を展開し、台湾でも年内に20店を一気に出す計画だという。
ホンハイが自社ブランドで出した激安テレビ
これと連動した動きとして、昨年秋からホンハイは自らのブランドで60インチという巨大画面の液晶テレビを、3万8800台湾ドル(約11万円)という低価格で台湾の電話キャリアらと組んで売り出した。従来は30~40万円した60インチテレビを一気に消費者に近づけた“価格破壊”は大きな反響を呼んだ。
このテレビで使われた液晶こそ、郭台銘が自らの資金660億円を投じて経営権を掌握した旧シャープ堺工場(現・堺ディスプレプロダクト)で造られたものである。同工場の稼働率は、郭台銘の出資前は3割を切るなど低迷していたが、現在は稼働率も8~9割の水準を維持しているとされる。郭台銘からすれば、本体の筆頭株主にならなくても、シャープから取るものは取ったという気分に違いない。
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