シャープへの資本参加が実現しなくても、影響なし
ホンハイが中国で従業員の新規雇用を停止した、という情報が流れたのはそれから約2カ月後の今年2月中旬だった。一般には、「アップルのiPhone5の売れ行きが思わしくないための措置だ」と言われているが、そんな短期的な事情だけではないはずだ。
ホンハイはこれまで、中国の廉価な労働力を使って、アップルやソニー、デルなどから大量受注した電子機器製品を大量に製造し、小さな利ザヤを大きく雪だるまのように積み上げてきた。従業員の募集停止は、この「海外受注、中国生産型ビジネスモデル」の転換を予感させた。
シャープについても、ホンハイの内部関係者は昨年末の時点で筆者に対し、「われわれはすでにシャープ抜きの世界戦略を描いている。シャープへの資本参加は実現すればプラスだが、実現しなくても我々にはほとんど影響はない」と語っていた。すでにホンハイはシャープ抜きでの「未来」を描いていた、ということであろう。
ホンハイがシャープと組む理由は一言で言えば、サムスン電子への対抗のため、「日台連合」を組もうというものだった。そしてホンハイはシャープの虎の子の技術である中小型液晶のノウハウを手に入れ、中国に工場を造りたいと考えていた。だが、シャープがこれに難色を示したため、ホンハイにとってシャープと組む理由はなくなったというわけだ。
ホンハイとシャープの中国語の頭文字を取って「鴻夏恋」(ホンハイとシャープの恋)と呼ばれた提携が破局しても、ホンハイの株価にはさほど影響がなかった。マーケットはすでに、シャープとの提携が重要ではなくなっていたことを理解していたのだろう。
ホンハイは台湾GDPの3割弱を稼ぐ
最近、台湾で最も人気がある経済紙の商業週刊がホンハイの総力特集を組んだ。その中でいろいろ興味深い数字が紹介されていたので挙げてみたい。
【台湾全体のGDPへの貢献度=28%】
【グループ連結売上高=3兆9000億台湾ドル(12兆円超)】
【2012年のグループ総雇用者数=150万人】
【深圳工場の社員食堂=6万人の食事】
台湾を「国」として見た場合、その規模は中国や日本に比べれば小さいが、世界的には決して小さくはない。2011年のGDPは世界の26番目にあたる。アルゼンチンや南アフリカ、タイなどの国よりも大きい。その台湾のGDPの3割近い数字を稼ぎ出しているというのだから、ホンハイは“超巨大企業”と呼べる。日本の製造業でホンハイより売り上げが大きいのはトヨタ自動車くらいだ。
ホンハイの巨大さを現すのには従業員数で見るのがもっとわかりやすい。150万人という従業員数は世界の製造業では最多であり、米国小売りチェーンのウォルマートについで世界2番目だとも言われている。その最大の拠点である深圳工場には30万人の労働者がいるとされ、一工場が中型の自治体レベルの規模を持っている。
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