戦争秘話、日本は米本土を3回も砲撃していた アメリカのどこ?驚きの「被害総額」は?

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「伊17」に続き、その約4カ月後の6月20日に、「伊26」潜水艦がカナダ本土のバンクーバー島にあるカナダ軍の無線羅針局を、翌21日に「伊25」潜水艦がオレゴン州のフォート・スティーブンス陸軍基地を砲撃しました。

この計3回の「砲撃」のほか、同年9月には「伊25」の「艦載機」がオレゴン州の森林地帯へ焼夷弾を投下するという、アメリカ本土への「空襲」も行っています。ただし、いずれの攻撃も思ったような成果は得られなかったようです。

映画化・ドラマ化はされている?

Q11.こうした一連の攻撃は、アメリカにどんな影響を及ぼしましたか?

真珠湾攻撃以降、快進撃を続ける日本に対し、劣勢に立たされていたアメリカは、日本軍による西海岸への空襲および上陸侵攻を強く警戒していました。その最中に起きた「伊17」による砲撃は、政府から国民にいたるまで大きな衝撃を与えました。

また、アメリカ国内に住む日系人に対する不信はより高まり、日系人を強制的に収容所に送る措置に対する反対論・懐疑論なども次第に少なくなりました。

Q12. この「史実」は、日本で映画・ドラマ化されていますか?

いいえ。ただし、1979年にアメリカで公開され、日本でも上映された『1941』(監督:スティーブン・スピルバーグ)は、この「伊17」によるアメリカ本土砲撃をモデルにつくられた「コメディ映画」です。

ただ、潜水艦の砲撃目標がなぜかハリウッドだったりと、残念ながら史実を再現している作品とはいえません。

「伊17」は、アメリカ本土砲撃から帰還後、まもなく北太平洋での作戦や南方ガダルカナル島への輸送任務のほか、連合国軍の通商破壊などの戦果を上げます。

しかし、1943(昭和18)年8月19日、ニューカレドニアのヌーメア湾にて、ニュージーランド軍の掃海艇「トゥイ」の爆雷攻撃で損傷し浮上、その後、同鑑からの砲撃および水上機の爆撃により沈没しました。乗員97名が戦死、生存者はわずか6名でした。

同じく、アメリカ本土を砲撃した「伊25」「伊26」も、やがて撃沈されたり行方不明となり、同型の潜水艦で終戦まで残存できたのは1隻(伊36)のみです。

今回紹介したように、戦争の「本当の姿」を知ることは、戦争の悲惨さばかりでなく、なぜ日本はあの時、世界を相手に戦わなくてはならなかったのか、そしてどう戦ったのかを理解することにほかなりません。

歴史とは、たんに過去の出来事の羅列ではありません。そのひとつひとつには、先人たちの苦渋の決断があり、成功、失敗があり、そしてさまざまな「教訓」に満ちています。

私たちは「あの戦争」から何を学ぶべきなのか。新しい研究成果が盛り込まれた「最新」の日本史を学び直すことで、現代を生きるための「知恵」を身につけてください。

山岸 良二 歴史家・昭和女子大学講師・東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師

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やまぎし りょうじ / Ryoji Yamagishi

昭和女子大学講師、東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師、習志野市文化財審議会会長。1951年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専門は日本考古学。日本考古学協会全国理事を長年、務める。NHKラジオ「教養日本史・原始編」、NHKテレビ「週刊ブックレビュー」、日本テレビ「世界一受けたい授業」出演や全国での講演等で考古学の啓蒙に努め、近年は地元習志野市に縁の「日本騎兵の父・秋山好古大将」関係の講演も多い。『新版 入門者のための考古学教室』『日本考古学の現在』(共に、同成社)、『日曜日の考古学』(東京堂出版)、『古代史の謎はどこまで解けたのか』(PHP新書)など多数の著書がある。

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