戦争秘話、日本は米本土を3回も砲撃していた アメリカのどこ?驚きの「被害総額」は?

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今回も、よく聞かれる質問に答える形で、解説しましょう。

アメリカ本土を本当に砲撃?

Q1.「日本軍がアメリカ本土を砲撃した」というのは史実ですか?

本当です。真珠湾攻撃から約3カ月後の1942(昭和17)年2月24日(現地時間23日)、アメリカ西海岸にある製油所を、日本海軍の潜水艦が艦砲射撃、いわゆる「大砲」による攻撃を行いました。日本軍によるアメリカ本土への初の砲撃です。

Q2.「アメリカ本土への攻撃」といえば、「風船爆弾」が有名ですよね?

そうですね。爆弾をぶら下げた風船をアメリカまで飛ばし落下させるという「風船爆弾(気球爆弾)」は、実に大胆な発想から生まれた兵器で、女子大生・高校生を中心に旧日本劇場(日劇)などで製造されました。

和紙をコンニャク糊で固めた直径10mの巨大気球に、爆弾や焼夷弾のほか高度調整装置などを積み、高度1万mまで上げて偏西風にのせて飛ばし、アメリカ本土上空まではおよそ2昼夜。爆弾は自動的に落下させる仕組みでした。

Q3.「風船爆弾」はどの程度の戦果があったのでしょうか?

昭和19年11月から翌20年4月までに、千葉県の一宮、茨城県の大津、福島県の勿来(なこそ)から約9000個を打ち上げ、アメリカには300個弱の到達が確認されています。実際の戦果は非常に微々たるものでした。

現在、明治大学生田校舎内にある明治大学平和教育登戸研究所資料館(旧陸軍登戸研究所)には、風船爆弾の小型模型が展示されています。

Q4.風船爆弾に加えて、日本の潜水艦もアメリカ本土を攻撃していた、と。

そうです。潜水艦というと「魚雷攻撃」のイメージが強いですが、このアメリカ本土砲撃を行った潜水艦「伊17」は、全長約110m、水上排水量2198トンもある大型潜水艦です。

魚雷発射管6門のほか、大砲(14センチ砲1門)、機銃、偵察航空機を備え、航続距離は約2万6000キロ、軽く地球半周を移動可能でした。

Q5.アメリカ本土のどこを砲撃したのですか?

カリフォルニア州サンタバーバラ(ロサンゼルスの北西100キロ)にあるエルウッド石油製油所です。

現地時間で1942年2月23日19時40分、日没のタイミングで浮上した「伊17」は、目標の沖合約4キロの位置から14センチ砲を計17発、約20分にわたって砲撃し、砲弾のいくつかは命中しました。

このアメリカ本土に対するはじめての砲撃は、日本の新聞でも「我潜艦の一撃、全米を震撼」の見出しで、後日大きく報じられました。

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