エディオンvs上新電機、営業秘密を巡る争い 企業は元社員の不正をどこまで問えるのか

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元従業員による営業秘密の持ち出しを巡って、エディオンが同業の上新電機と個人を訴えた(写真はエディオン名古屋本店)

元従業員が在職中に自社から持ち出した営業秘密を、転職先のライバル会社に提供してしまった――。よくある話のようで、実は事前に防止することも、事後的に刑事の処罰を求めることも難しい、というのが実態である。理由は明快。証拠をつかむことが難しいからだ。

そもそも自社の秘密を持ち出したということを証明することが難しい。営業秘密が持ち出されたことに気付くのは、基本的に持ち出した元従業員が退職してから一定期間を経過した後になる。

事後的に刑事の処罰を求めようとする場合、その在職していた従業員のサーバーへのアクセス履歴を調べることが第一歩だ。だが、まずその会社が過去のアクセス履歴をどのくらいの期間ストックしているかから、問題になる。「最低でも退職時点から1年はさかのぼる必要があるが、そこまでストックしている企業は少ない」(サイバーセキュリティ大手、三井物産セキュアディレクションの神吉敏雄社長)。

在職中に引き出した証拠をつかむことができたとしても、それを転職先で提供したかどうか、持ち出しや提供に対して転職先の関与もしくは指示があったかどうかは、転職先企業内部の問題になる。このため、営業秘密を持ち出された会社がその証拠をつかむことは、基本的に不可能だ。営業秘密を持ち出す従業員にとっては、まさに”やり得”だったわけだが、その状況を一変させる決定が今年4月下旬に大阪地方裁判所で出されていることは、あまり知られていない。

元課長が持ち出した情報で事業を立ち上げ

営業秘密を持ち出された“被害者”は、家電量販店大手のエディオン。そのエディオンが、営業秘密を盗ませたと名指ししているのが、同業の上新電機である。

この事件の概要はこうだ。エディオンの課長職にあった従業員が在職中の2013年10月だけでなく、退職後の2014年1月にも、在職時に使用していたパソコンを遠隔操作し、住宅リフォーム事業の原価表や管理システムのマニュアルなどを取得。転職先である上新電機側がその情報を利用し、同様の事業を立ち上げ、エディオン側が損害を受けたとし、エディオンがこの元課長と上新電機を刑事告訴したというものである。

元課長は大阪府警察に逮捕され、2015年11月、懲役2年(執行猶予3年)・罰金100万円の判決を受けて、有罪が確定している。一方、上新電機は大阪地方検察庁に書類送検されたものの、不起訴処分になった。

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