日銀、株価を狙った政策に陥るも結果は不発 一本足打法で手詰まりを露呈

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これらを素直に聞くと、2%の旗をおろさない以上、目標に向けて異次元の緩和手段を一層強化するかのように受け止められる。過去何度かサプライズを演出してきた黒田日銀だけに読みにくいが、これまでの異次元緩和の枠組みを大きく見直し、国債買い入れを減額したり、マイナス金利政策を撤廃するといった金融緩和の出口を探る可能性は低そうだ。

今回の決定後、市場関係者から「市場の金融緩和の催促をまったく無視する決定」と残念がるコメントも流れた。しかし、期待外れでよかったのではなかろうか。

6月のBrexit(英国のEU離脱決定)以降、世界の金融市場は一時的に不安定さを増した。しかし、その後市場は落ち着きを取り戻している。7月26~27日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文では「経済の見通しに対する足元のリスクは減少した」と記された。FRB(米国連邦準備制度理事会)幹部からも「Brexit投票後、市場はきわめて秩序正しく推移している」(アトランタ連銀のロックハート総裁)というコメントが飛び出している。

黒田総裁「財政ファイナンスでもヘリマネでもない」

日本国内に目を転じると、個人消費は冴えず、高収益をあげているのに企業の設備投資意欲は鈍い。しかし、異次元緩和をさらに異次元の領域に踏み込むほど、日本経済は危機的な状態なのだろうか。

7月の月例経済報告の景気判断は「このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」だった。景気が悪化しているわけではない。実質GDP成長率が0%台程度と低いのは、そもそもの潜在成長率が低いせいだ。

6月に2017年4月に予定されていた消費税率10%へ引き上げの延期を決めたり、28兆円という、リーマンショック直後に次ぐ規模の経済対策を決めた政府の判断には、株価に一喜一憂して、今の経済を無理矢理持ち上げようとしている点で共通するものがある。しかし、こうした金融・財政政策は需要の先食いでしかない。

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