8月以降の日本株にはかなりの警戒が必要だ 日銀会合で外国人投資家が買いにくい状況に

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そして、今回の日銀会合で決定した注目すべき内容は、次回9月の決定会合で、過去の政策が物価や経済にどのような影響を与えたのかを分析するということだ。

「2年程度で2%の物価上昇率を実現する」という看板を取り下げる可能性がある。既に達成時期が曖昧となっているなかで、2013年4月の異次元緩和スタート時の方針をゼロベースに戻すとなれば、金融政策の方針転換と受け取られる。

こうした可能性があるなか、金融政策など大きな流れで中長期的な売買を実施するグローバル・マクロと言われる外国人投資家は、9月の会合まで身動きが取れなくなる。腰を据えた投資資金が流入しないことは、短期的な投資主体で乱高下する可能性を示唆する。

「9月日銀会合での金融政策方針変更」というリスク

また、8月に入ると6月末の英国による欧州連合(EU)離脱の影響が織り込まれた経済指標が続々と発表される。週末に発表された米4-6月期GDP速報値が予想を下振れたのは、英EU離脱問題で積極的な設備投資が手控えられたことの影響が大きい。EU離脱が決定したことで、こうした設備投資は一段と低迷する可能性もある。8月から9月にかけては、英EU離脱に絡んだ実際の経済状況がリアルに伝わることから、株式、為替は急変動を覚悟しておいたほうがよさそうだ。

つまり、米国の早期利上げ観測の後退でドル売りが進みやすいほか、各国の経済指標が悪化する恐れもある。そんな外部環境のなか、9月の日銀会合では、金融政策の方針が変更されるかもしれない。こうした事象を考慮するとETF買入が一定の下支えとなっても、日経平均やTOPIXなど指数がぐいぐい買われるような地合いは想定しにくい。

ただ、一つだけ想定外の株高シナリオがある。それは日銀がETF買入の運用を変更することだ。現在、日銀によるETF買入の運用は以前より明確ではないが、経験上、下落したタイミングで買いを入れているケースが目立つ。つまり下落局面での下支えだ。

もし、上昇局面でも買いを入れるような運用となれば、「高値でも日銀が買ってくる」といった期待感が発生する。「高値をとるのは外国人、下値を拾うのは国内年金や日銀」といった構図が変わると、相場の見方も変わろう。一笑に付される話ととられるかもしれないし、正直、今の日銀にここまで求めるのは酷な話だが、実現すれば、このインパクトは大きいと考える。
 

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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