8月以降の日本株にはかなりの警戒が必要だ 日銀会合で外国人投資家が買いにくい状況に
このうち、米ドル特則の拡大は市場にほぼノーインパクトのため、市場に影響を与える金融政策はETFの買入額の拡充のみ。マイナス金利の深掘りは金融機関の収益をさらに圧迫するとの批判が出ていることや、円安誘導が目的であると解釈される可能性があるため、適切ではないとみられたようだ。
国債買入枠の拡大に関しては、政府の国債増発を睨みつつ、9月20-21日に開催される次回の決定会合でボリュームを検討するのだろう。日銀としても8月2日に政府が発表する経済対策での国債に関する内容を見極めたかったようだ。
一方、同時に発表された経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、消費者物価コア指数(生鮮食品除く)の上昇率の見通しは、2016年度の+0.5%を+0.1%に下方修正している。2017年度こそ+1.7%に据え置かれているが、17年度中に2%の物価目標が達成できる見込みはほとんどないとの見方が一般的だ。
「年6兆円のETF買い入れの効果」は大きい
今回の追加の金融緩和は「ゼロ回答だと円高、株安が進行し、日銀が政府、投資家に叩かれるので、この状況を回避したかった」だけかもしれない。
つまり、政府や市場のプレッシャーで苦しい状況のなか、日銀はとりあえずETF買い入れ枠の拡充を決定したという流れが、今回の追加の金融緩和発表の本筋と置き換えることもできる。ひとまず株だけは支えておこうという意識なのだろうが、「株高=景気拡大」といった構図はこの数年を見る限り難しい。日本は、年金などで間接的に株高の恩恵を享受する人が多く、直接的に株高がプラスとなる人はまだまだ少ない。
ちなみに年間6兆円のETF買い入れは市場へのインパクトは大きい。計算上1営業日あたり240億円(6兆円÷250営業日)に相当する。
実際、買い付けを行う際は様々なルールがあるようだが、強烈な買い需要が誕生することとなる。ある意味、臨機応変に方針を転換する外国人投資家を呼び込むよりも、確実に買いを入れる主体が存在しているほうが、株式市場にとっても安心材料だ。ただ、業績の良し悪しや企業統治体制などに関係なく買いが入ることから、企業の成長性などを見ての投資という観点では、問題有りの政策と言えよう。
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