電気自動車ビジネスにベンチャーが次々参戦 慶応ベンチャー、こだわりの京都産、そして、改造EV
電池やモーター、インバーターといった汎用部品を組み合わせれば、比較的容易に製造できるのが電気自動車(EV)。EVは、従来のガソリン車に比べて、自動車ビジネス参入の壁を低くした。このチャンスをものにしようと、さまざまなベンチャー企業が名乗りを上げている。
オープンソースがカギ 慶応ベンチャーの挑戦
慶応義塾大学発のシムドライブはEVベンチャーの代表格だ。同大学教授の清水浩社長らが2009年に設立、企業や自治体と連携してEV試作車の開発を行っている。
1回の事業につき、参加企業約30社から一律2000万円を募り約6億円を研究に投じる。これまで1年に1台のペースで2台を製作した。現在は今年3月の発表に向け、第3号を開発中だ。この2月からは第4号の試作も始まる。
シムドライブの特徴は、車輪の中にモーターを内蔵するインホイールモーター方式で駆動すること。動力伝達のロスを抑えられ、効率がよいうえ、車内空間も広く取れる。「EVにとって最も合理的な技術だ」と清水社長は自信を見せる。
試作車第2号の「シム・ウィル」は、1回の充電で351キロメートルというEVとしては最長クラスの航続距離を達成した。
シムドライブは、技術だけでなく、ビジネスモデルにも特徴がある。
試作車開発では、自動車の枠を超え、素材や電機、住宅などの国内外メーカーや商社も参画。参加各社はそれぞれが提供する開発のための技術情報をすべて共有する。つまり「オープンソース」だ。そこで得た技術やノウハウを基に、それぞれがEVの製造・販売に乗り出すことをシムドライブは期待する。
さらに、自動車・電機業界から転身したシムドライブの技術者約40人が、メーカーに対して量産化に向けた製造サポートまで行う。彼らが目指すのは、EV開発のプレーヤーを増やし普及の素地を作ることだ。
実際の量産については「参加社次第。動きがあるかはわれわれが言えることではない」と言葉を濁すが、「2~3年以内という目標はある」と語る。大手企業が本格的な量産へ向けて乗り出すかが、重要なカギとなりそうだ。