VTHDがフォードのアフター業務を行うワケ 日本撤退で注目されていた6万台のケア

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ピーシーアイは2010年にスウェーデンの自動車ブランド「サーブ」の正規輸入業務を引き継いだ経験がある。サーブは1989年にGMの傘下に入ったが、GMの急速な経営悪化で2010年にはGM傘下からスパイカー傘下に移った。日本でも、サーブの正規輸入業務は、これを行っていたGMが手を引いたために、宙に浮いてしまうことが問題となった。

そこでサーブ・オートモービルABと契約し、サーブの輸入販売業務を引き継いだのがピーシーアイだった。契約からつかの間、2011年にサーブ・オートモービルAB社は破産。サーブの新車生産も中断され、ピーシーアイにはサーブのアフターサービス事業だけが残った。

業務開始時点でサーブの国内保有台数は約1万5000台だったが、新車の販売がないため、保有台数は毎年1割程度のペースで減少している。今では約1万台まで保有台数が減少しており、それに伴ってピーシーアイの部品供給のビジネスも縮小していた。ピーシーアイが赤字続きなのはこうした事情もある。

保有台数6万台で一定の収益が見込める

ピーシーアイは今年10月から、全国に配置されているフォードのサービス拠点を通じて交換部品を供給し、車両保証やリコール対応といったアフターサービスの窓口業務を行う。フォード車の保有台数は約6万台あり、サーブと比較すると部品交換や補修事業といったアフタービジネスの売り上げ規模も大きい。

「今のところ新車の販売を行なう予定はない」(VTホールディングスの高橋一穂社長)ことから、フォード車の保有台数も毎年1割のペースで減少することが見込まれている。だが、今のピーシーアイに必要なのは2輪車などの新規事業の芽を育てることであり、「次のビジネスを育てるあいだの収益のベースになる」(ピーシーアイの伊藤誠英社長)という意味で、フォードのアフター事業は十分なうまみがあるというわけだ。
 

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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