テレ朝会長激白、「テレビの縮小は宿命的だ」 テレビ局のトップはテレビ離れをどう語る?

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――テレビ離れはスマホの普及も大きかった?

そうですね。持ち歩いていつでもどこでもコミュニケーションやエンタメを楽しめる。若い人はそういうものを使いこなす。今は置き型のテレビを持たない人もいる。本当にそう。調査でわかっている。

だからこそ、アベマTVは10~30代くらいのヤング層を対象にしている。広告主からすると購買をリードする層だ。昔からF1(20~34歳女性)M1(同男性)と言われている。テレ朝はファミリー層にこだわってきたので、こうした層は得意とは言えない。ヤングをターゲットにすることで、地上波にもいい効果が期待できると思っている。

オリジナルのニュース、バラエティのチャンネル以外に、サーフィン専門チャンネルなども編成している

――主な視聴者が高齢者なので、若い層向けの番組を作れなかったのでは。

テレ朝は「日本教育テレビ」(発足時の社名、教育番組が専門だった)のDNAがあって、時代劇や土曜ワイド劇場(2時間ドラマ)などもある。視聴率を取る番組だが、若い人は見ない。私が編成担当になってから深夜のワイドショーをバラエティにしたり、成功したものはゴールデンに持ってくるなどタイムテーブルを変えたが、トレンディドラマが作れない。努力不足だと思います。

アベマTVはスマホユーザーがメインなので、テレ朝がなかなか取れない層にも訴求できると思う。コンテンツはどちらでヒットしても、もう片方にスピンオフできる。バラエティ「ロンドンハーツ」で生まれた「50TA」(お笑い芸人の狩野英孝氏が扮するアーティスト)のライブ配信は、アベマTVですごい視聴数だった。逆に、アベマTVでヒットしたものを地上波の深夜番組と連動させてもいい。

テレビを中心に、その周辺を攻める

早河 洋(はやかわ ひろし)/1967年テレビ朝日入社。広報局長、編成局長、報道局長、編成本部長などを経て2009年にプロパー初の社長に就任。2014年から現職。「ニュースステーション(現・報道ステーション)」の初代プロデューサーを務めた

――今後は朝のニュース番組なども編成する方針です。人材面などの見通しは。

課題は、まずはコンテンツの充実。次は制作体制。短期間で試行錯誤してやってきたので、ヒットを生み出すには番組制作力を充実させなければならない。人だけではなく、他社のクリエイター集団の知恵を借りたりして、ネットならではの先進的、挑戦的なものをやりたい。

――アベマTVが支持されることで、地上波のテレビが見られなくなる可能性はないのか?

地上波が大衆から見捨てられることにはならない。無料で色々なものを見られる習慣性はそんな簡単には崩れないと思う。スポーツ中継や「アルプスを行く」といったドキュメンタリーなどはやはり大画面で見たい。スマホでもいい、という層は増えていくと思うが。

――テレ朝の今後の戦略は?

テレビはいずれ行き詰まるから、不動産など、テレビ以外の収入を獲得するのが各局の戦略。ほとんど負け惜しみだが、テレ朝はコンテンツとその周辺で生きていくのがいいのではないかと思っている。放送以外の経営ノウハウがなく、ほかの事業を買収しても本物のコングロマリットにはなれない。テレビを主軸に、その近辺のビジネスを拡大していきたい。

(撮影:今井康一)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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