なぜ現代は、ゾンビルネッサンスなのか

こんな世界は一度崩壊してしまえ?

映画、漫画に再び進出するゾンビたち

たとえばゾンビ界の大御所ジョージ・A・ロメロの2009年の映画『サバイバル・オブ・ザ・デッド』では「ゾンビはもはや人ではない。躊躇なく排除すべき」というリベラル派と「神から与えられた人の形を取っている以上、その存在も尊重すべき」という保守勢力が孤島で激突。リベラルの理想とそのインチキくささ(某政党の悪口ではありません)、保守の信念と頑迷さを描いていました。

「さすがゾンビ作品の元祖だけに変わったことをする人だ」と思いますが、ゾンビの出現はそのようなテーマを娯楽として描くことができる、ユニークな危機なのです。

日本では花沢健吾さんが『アイアムアヒーロー』という漫画作品をお描きになっています。こちらでは原因不明の疫病がアウトブレークし人々がゾンビ化する。

格差が広がる日本社会でもし秩序が崩壊したら、どのようなことが起こるでしょう。作品では当初、DQNと呼ばれる現代型不良と、サークルの幹事のようなコミュニケーション能力の高い人間が手を組み、主導権を握る。しかしやがて彼らも死に絶え、そして家に引きこもることで生き延びていた、本来日陰者の人々がネットで連絡を取り合い、活動を始めます。

2009年のアメリカ映画『ゾンビランド』も現代の切り取り方は似たところがあります。こちらでは臆病なオタク青年が主人公。ゾンビが出現し荒廃した社会の中で、たくましいテキサスオヤジや、タフなハートの女性と出会い、社会進出(?)を学んでいきます。

一方、ついには社会主義圏にまでゾンビは進出。キューバ初の長編ホラー作品でもあるという『ゾンビ革命』が、2011年に製作されました。考えてみれば、引きこもりやオタクは、現代資本主義ならではのライフスタイルなのかもしれません。

社会主義国キューバに現れたゾンビは、最初は親米勢力の過激派と間違われる(割と最後まで間違われている)。主人公たちはゾンビにおびえるようなナイーブさは持ち合わせず、これが商機とタフにお金儲けに走ります。豪快です。

しかしまじめな話、現代ではなぜかくもゾンビが愛されるのでしょう。しかも世界中で。

20世紀の黄金期を終えた現代。どこを向いても混迷ばかり。もしかすると人々は「こんな世界は一度崩壊してしまえ」とひそかに夢想し始めているのでしょうか。今後もますますゾンビの動向から目が離せません。

 

 

撮影:今井康一

【初出:2013.2.2「週刊東洋経済(日立に学べ!最大の危機こそ変革のチャンス)」

 

(担当者通信欄)

←『ゾンビ襲来』は国際関係論の入門書としておすすめの一冊。ゾンビが襲来したときの行動パターンで各陣営を分類してしまう怪書!オカルトコーナーか人文コーナーを探すと見つかります。ドレズナー先生の強烈な個性に、谷口功一先生の抱腹絶倒濃密解説。更にドレズナー先生、谷口先生、共訳者の山田高敬先生の近影(?)がゾンビ化しているのも見ものです(笑)『ゾンビ襲来』に『ゾンビ経済学』に「ユリイカ」ゾンビ特集、「バイオハザード」の新作、と空前のゾンビブーム襲来中。ラノベ、漫画もゾンビ爛漫の今日この頃です。

さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2013年2月4日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、海外移住&投資)」で読めます!
【スタンダールに学ぶ、出版の伝統と変容】
出版不況の中で好調のライトノベルもハードカバーで出ていたらこうはいかなかった?日本の書籍にカバー付きが多い理由は?

 

堀田先生の近刊紹介。中年の青春小説『オッサンフォー』(講談社、2012年)。詐欺師四人組が大阪を舞台に繰り広げる事件も、ぜひ本コラムとごいっしょに♪

 

大好評、堀田先生主宰の電子雑誌「AiR3」(2012年リリース)。漫画家、作家、研究者、ジャーナリスト…豪華執筆陣にも大注目です!  

 

実は哲学ってライトノベルで入門できます。たとえば、金髪はの子がデカルト。『僕とツンデレとハイデガー』(講談社、2011年)

 

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