青函と違う「スイス世界最長トンネル」の実力 旅客・貨物両用でも減速必要なしのワケは?

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しばらくすると車掌が検札にやってきた。自分が日本人とわかると「日本を抜いて世界最長になったね……」と満面の笑みを浮かべて話しかけ、周囲の乗客にも盛んに「世界一」のトンネルをPRしていた。

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トンネル内を走行中の様子

トンネルを出た列車は、北側坑口の仮設ホームに到着。11時48分に発車し、12時15分に到着したので、57kmを27分で走破したことになる。トンネルの正式開業後は、旅客列車は当面時速200kmで運転されることになっているが、今回はまだ習熟運転も兼ねているので、時速140km程度で走行していたようだ。

イベント会場には、スイス連邦鉄道が2017年からこのゴッタルド線のインターシティー(IC)に投入予定のEC250形車両の実物大先頭部モックアップも展示されていた。スイスの鉄道車両メーカー、STADLER(シュタッドラー)社製のこの連接式電車は、国旗をイメージした白いボディに赤のラインの洒落たデザインで、最高時速250kmでチューリッヒ~ルガーノ間を現行より30分短縮して2時間10分で結ぶという。

欧州各国が驚くスイスの力

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2017年から運行を開始するEC250形の先頭部モックアップ

今回のトンネル開通について、ヨーロッパ各国のメディアは「小国スイスが計画どおりに巨大な作品を完成させた。どうしたらこのような世紀のプロジェクトを日程通りに完成させるのだろうか?」「われわれEU諸国も見習わなければならない」など、驚きや感嘆の声とともに報じている。

スイスは最初の鉄道が開業した1847年以来、鉄道網の敷設に並々ならぬ情熱を注いできた。在来線のゴッタルドトンネルを1880年に完成させたのをはじめ、1889年には自走式の鉄道として現在でも世界一の急勾配(480パーミル、1000m進むごとに480m上る)を誇るピラトゥス登山鉄道が開業、さらに1912年にはアイガーの岩壁にトンネルを手掘りし、ヨーロッパ最高所の鉄道駅であるユングフラウヨッホ(標高3454m)までの登山鉄道を完成させるなど、19世紀末から20世紀初頭にかけて当時の最先端技術をつぎ込み、山岳地帯を巡る鉄道網を完成させた。

ゴッタルドベーストンネル開通は、優れた技術で険しいアルプスを克服してきたスイスの鉄道にとって新たな時代の幕開けとなる。12月のダイヤ改正で始まる、正式運行開始以降の発展を見守りたい。

三浦 一幹 トラン・デュ・モンド代表

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みうら かずみき

1960年東京生まれ。世界の鉄道フォト・ライブラリー「トラン・デュ・モンド」代表。世界各国の鉄道取材・撮影にあたる。海外鉄道研究会、日本旅行作家協会会員。

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