青函と違う「スイス世界最長トンネル」の実力 旅客・貨物両用でも減速必要なしのワケは?
トンネルの正式運行開始は、ヨーロッパの鉄道の冬ダイヤ改正日となる12月11日からだが、開通直後の週末に記念イベントが開かれ、あわせて有料の体験試乗会が催された。試乗会はシャトル列車に乗車し、往路は新たに開通したゴッタルドベーストンネルを通過、復路は在来線経由で戻るというプランで、このイベントの目玉だ。
4つあるイベント会場のひとつ、試乗列車が発着するトンネル坑口に近い会場は、地元特産品のチーズ、ワイン、工芸品を紹介するブースが多数並び、続々とシャトルバスやシャトル列車で到着する見物人でたいへんな賑わいを見せていた。ここにはトンネルを通過する列車をコントロールする巨大な司令塔が建っており、おそらく普段は立ち入ることのできない場所だ。
青函トンネルとの大きな違いは?
シャトル列車には会場内の仮設ホームから乗車する。スイス連邦鉄道(SBB)のRe460形電気機関車に2階建て客車10両を連結したシャトル列車は、発車するとイベント会場の脇を走り抜け、2分ほどでゴッタルドベーストンネルに入った。次第に加速し、トンネル内の照明が流れ過ぎて行く。
トンネル内の軌道はほぼ直線で、新幹線と同じ軌間1435mmの線路は揺れもなく静かだ。トンネル内最高地点の高さは海抜550mだが、高低差は最小限に抑えられている。
青函トンネルとの大きな違いは、1つのトンネル内に2本の線路を通すのではなく、線路1本につき1つのトンネルを掘り、これを2つ並べた「単線並列式」を採用していることだ。青函トンネルでは、新幹線とのすれ違いの際に起きる風圧で貨物列車の荷崩れが起きるのを防ぐために最高時速を140kmに制限しているが、この方式であれば同じトンネル内でのすれ違いがそもそも起こらないのでその必要はない。
また、非常の際やトラブルの発生時には、独立した単線トンネルとして片方の線路だけを使い、上下線の区別なく列車を運行させることができるシステムにもなっている。2本のトンネルは325mごとに非常用通路で繋がっているほか、途中の2カ所には非常の際に列車から脱出するためのホームも設置されている。
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