米国では銀貨が過去最高の売れ行き

急騰後、調整中の銀価格はどうなるか

産業の発展に大きく寄与した銀

実は、著名投資家であるウォーレン・バフェット氏も、銀に投資をしたことで知られている。同氏は97年から98年にかけて、当時の世界新産銀供給量の4分の1に当たる約4000トンの銀を購入した。その後2006年にすべて売り閉じたとされており、近年の急騰劇の恩恵は受けていないもようだが、『オマハの賢人』の銀投資には、当時、多くの市場関係者が驚かされた。なお、バフェット氏の友人であるビル・ゲイツ氏もまた、投資会社のカスケードを通じてカナダの銀鉱山会社パン・アメリカン・シルバー株を取得したことは有名だ。

アメリカ人が銀を好むもう1つの理由は、この金属の物性から抱く期待感にあろう。かつて銀の工業用用途として最も使われていたのは、その感光性の強さをハロゲン化銀という形で光センサーに生かした写真フィルム向けであった。

銀の優れた化学的特性が、豊かさを実現した20世紀のアメリカにおいて、ハリウッド映画を繁栄させ、ジャーナリズムや広告、旅行産業の発展を支えたのである。さらに銀は、あらゆる金属の中で最も電気伝導性が高く、また接触抵抗も少ないことから、通信機器や電子機器の接点や導電材料に用いられている。近年ではプラズマテレビ向けの電極ペーストとしても脚光を浴びたが、現在ではLCDにシェアを奪われて、PDP大手のパナソニックが研究開発を打ち切るなど、劣勢の挽回は難しい情勢である。

感光材向け需要が写真や映像のデジタル化に伴って縮小し、PDPが苦戦する中、太陽電池の電極用ペーストは、今後も成長が見込める工業用途である。2012年は、欧州財政危機の影響による太陽光発電向けの補助金削減や、PVモジュールの薄膜化・効率化もあって苦戦を強いられたが、余剰電力の固定価格での買い取り制度が始まった日本や、環境に優しい都市発展の目玉として大規模太陽光発電を計画する中国では、今後需要の拡大が見込まれる。

このほか、銀の化学的特性を活かした抗菌分野での需要拡大や、鉛フリーはんだ、さらには各種携帯端末向けに蓄電性のより高い酸化銀電池を開発する動きも有る。優れた物性を活かして、画期的な新商品が、しかも今後需要の高まる環境分野中心に花開くのではないかという期待が、様々なテクノロジー分野で強みを有する米国民にアピールするのである。

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