国民投票前夜、英FTは「大戦略」を仕掛けた なんと新規購読者数が600%アップ!
実際、その週末における、フィナンシャル・タイムズのデジタル版購読契約の売上は、通常の週末と比較して、600%に跳ね上がったという。つまるところ「何千もの」新規契約の獲得につながったのだ。
だが、購読契約の増加は偶然ではないと語るのが、フィナンシャル・タイムズのチーフコマーシャルオフィサーのジョン・スレイド氏だ。ニュースが出て、すぐ行われたリアルタイムマーケティングプランという戦略によるものだという。
「フィナンシャル・タイムズにとって、これは時折訪れる機会だ。ギリシャ危機や中国危機のときも同じような兆候が見られた。しかし、その金曜日の朝6時30分頃、これまでに経験してきたことが、ただの練習だったように感じた」と、スレイド氏は米DIGIDAYに話した。
6月23日、イギリス国民の52%がヨーロッパ連合脱退に賛成し、世界を驚愕させたとき、フィナンシャル・タイムズは総勢70名のマーケティングチーム、オーディエンスエンゲージメントチーム、そして顧客獲得チームを編集チームとともにシンクロさせるという、かつてない戦略を実施した。
「我々はマーケティングチームをリアルタイムに稼働させた。購入パターンやソーシャルでの機会をうかがい、マーケティングの予算をかなり積極的につぎ込み、記事に反映しようと試みたのだ。そしてオーディエンスエンゲージメントチームの仕事に抵触しないよう、細心の注意を払った。そのため、オーディエンスエンゲージメントチームと編集チーム、またマーケティングチームと顧客獲得チームのあいだでは、常にやりとりが交わされていたのだ」と、スレイド氏は語る。
マーケチームが記事を宣伝
このようなことを実施するうえでチームは、フィナンシャル・タイムズのニュースルームで頻繁に活用されている、購読契約ビジネスを強化するための分析システムを大きな頼りとした。どんな記事が人々に読まれていたかという情報は、マーケティングチームにフィードバックされる。そこでは、もっとも読まれている記事を宣伝するメッセージが作成され、ソーシャルプラットフォームに発信された。
フィナンシャル・タイムズはソーシャルプラットフォームで試験的にコンテンツを無料提供するという戦略を行ってきており、昨年からソーシャルメディア経由のトラフィックが着実に伸びてきている。
しかし、問題の週末には、ソーシャルプラットフォームへのトラフィックはかつてなく跳ね上がっていた。フィナンシャル・タイムズが掲載するFacebookのインスタント記事へのトラフィックは、通常の5倍となったという。