韓国大揺れ!「ロッテ不正資金疑惑」の衝撃度 四面楚歌状態、経営活動は完全に止まった

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三つ目に、ロッテグループの創業一族が、自身が保有する会社の業務請負により不当に利益を得たという疑惑だ。

検察は、オーナー一家が不当な利益を得ていたのか、背任の容疑があるのか、不正資金づくりの手段として使われたのか、などを捜査している。グループ会社内での不当な業務請負は、今回の捜査以前からしばしば、公正取引委員会の調査や国会の国政監査で俎上に上がった問題だ。しかし、今回はオーナー一家が所有する会社を集中的に捜査している。

最後の容疑は、2016年末にも完成予定の第2ロッテワールド建設における許認可が、まっとうな手続きに則って行われたかどうかだ。ただし、検察は第2ロッテワールドについて、「捜査に着するに十分な証拠が出ていない」として、この疑惑の捜査については一歩引いているようだ。

李明博政権の時代(2008~13年)に建設の最終許可を得たが、この時ロビー活動が行われていたのか。ロッテは「第2ロッテワールドは雇用創出と経済活性化という社会的合意の中で、全国経済人連合会(全経連)とともに公開の場で議論して推進した事業。不正はない」と主張している。

兄弟間の経営権争いが重なり四面楚歌のロッテ

ロッテグループは四面楚歌の状態に

現在、検察の捜査は3週目に入ったが、ロッテグループは事実上、正常な経営活動が不可能な状態に陥っている。特に、グループの中枢的な意思決定部署である政策本部と主要会社の経営陣が検察により召喚されており、各種の契約や国内外のM&Aはすべてストップしている。

今年の企業の株式公開(IPO)では最大案件とみられていたホテルロッテの上場は無期限延長された。ホテルロッテの上場にあたっては、ロッテは果たして韓国の企業か日本の企業かという国籍に関する議論も韓国内で生じさせた。ロッテグループにとっては、上場で得た資金によりグループ各社間でM&Aを推進し、サラダボウルのように込み入っている循環出資状態を解消する切り札だった。

経営が麻痺状態に陥った反面、経営権争いが再び動き出した。ロッテに対する韓国検察の捜査は、ロッテホールディングスの全株式のうち30%を握る大株主である重光宏之(韓国名・辛東主)前副会長にとって、昭夫会長を経営から退かせる良い名分となった。宏之氏は今後、ロッテホールディングスに対して臨時株主総会の招集を継続して要求し、「昭夫氏解任案」を提案する計画だ。現在、日本側で昭夫会長を支持する勢力の基盤は確固たるものだが、経営権について雑音と混乱も続くだろう。

「今回の株主総会では必ず負ける。しかし、意味のある変化が起きている。今年末になれば大株主の一つ、従業員株主会もこちら側につくだろう」。宏之氏側の側近は「意味のある変化」という単語で、今年下半期の経営権争いの方向性を示唆した。今年5月時点では、経営権争いはすでに終わった話との評価が支配的だった雰囲気だったが、それが変わり始めている。

それならば、年末とされる「宏之氏によるクーデター」はどれほど現実的なシナリオだろうか。現在、宏之氏が会長を務めるSDJコーポレーション側は、130人の従業員株主会のうち40人ほどが宏之氏側へ説得したことがわかっている。このために、SDJ側は数十人のOB社友を動員して、従業員株主会員に対し一人一人説得しているという。

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