愛知の電車からは「家族臭」がするんです 跡取り息子は地元がお好き?

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――いつ頃、継ぐの? プレッシャーは感じる?

社長は「65歳で引退して京都に住みたい」と公言しています。あと3年ですね。社長業をやれるかどうかという心配はしていません。単に「やるもの」として考えています。社長になったら社長の仕事をするだけで、伊藤正樹という人間は変わらないです。

昔は名古屋嫌いだった?

――なんだかカッコつけているけれど、東京にいた頃は「名古屋は嫌いだ。戻りたくない」とか言っていたぞ。

はい。中学・高校時代に周りの人とうまくいかなかったからです。いじめに遭ったわけではないのですが、部活でも勉強でも恋愛でも理想と現実があまりにかけ離れていて…。今振り返るといい思い出もいっぱいあるのに、あの頃は「もやもや感」が強かったですね。

東京にはすごく憧れていました。名古屋の中高生にとっては、東京は修学旅行で訪れる場所。「笑っていいとも」のアルタや渋谷のスクランブル交差点、東京ディズニーランド、東京ドームなど、竜宮城みたいなイメージなんです。行けば「何か」がある、カッコイイ人は東京に集中していると思っていました。

伊藤くんの話は僕にも当てはまる。小学校4年生から大学卒業まで住んでいた東京都東村山市がずっと嫌いだった。何もないベッドタウンだと。その反動で、高校の近くにあった吉祥寺や中央線沿線の街は大好きになった。
30代になってから東村山を再訪してみると、安くておいしい飲食店があったり美しい雑木林や畑が残っていたり。「新宿から30分で行ける田舎」として売り出せそうなほどのどかな町だ。10代の明るくない記憶を場所に結びつけて苦々しく思い出していたに過ぎないことに気づく。

――名古屋に戻ろうと思ったきっかけは?

特にありません。28歳のとき、ふと「そろそろ名古屋に帰ろうかな?」と思いました。動物が生まれた場所に戻っていくようなものでしょうか。父親の年齢もあるし、帰ったほうが自然かなと。実家も東京もあるという複雑な状況がなくなってスッキリしますからね。

大人になって少し世の中が見えるにようなり、「どんな職種や仕事でも自分がやりたいことはできるはずだ」と思ったのもあります。前の会社でも、仕事とプライベートの区別をあまりつけていませんでした。白い眼で見られたくはないので会社の作法は守りますが、仕事を仕事だと割り切ってしまうと面白くないからです。

――久しぶりに帰ってきた名古屋はどう?

路線や街ごとに人のカラーが違う東京とは空気が違うなと思います。名古屋は一軒家の大家族みたいですね。同じ電車の中に、中高生もサラリーマンもおじいちゃんもおばあちゃんもいる。家族臭がします。

名古屋はシンプルでわかりやすい。買い物したり人に会ったりする場所は栄か名駅。あとは金山経由で帰るぐらい。(喫茶店の)モーニング文化なので朝は早くて夜も早い。

高校時代まで住んでいたと言っても住宅地の中だけの話です。栄の飲食店なんてほとんど知りませんよ。東京時代も年に一度実家に帰るぐらいでした。今、初めて名古屋を観光しています。名古屋城はけっこうでかいな、とか。

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