こうした数値を高いと見るか低いと見るかだが、私はかなり高い数字と見ている。職場に学生を数日以上受け入れる本来型のインターンシップは、学生の受け入れ数に限界があり、実際の採用数よりはるかに少ないケースが多い。短いインターンシップも増えているが、企業が面接をする学生数全体に占めるインターン経由の学生の割合はそれほど高くはない。それに比べると、インターンシップ経由からの内定者の比率はかなり高い。それは、学生が有利だと感じているように、インターンシップが選考において有利に働いているのは間違いないことを物語る。
日程変更がインターンシップ経由採用を増やした
そもそも、なぜインターンシップを採用で活用する企業が増えたのだろうか。経団連は、「採用選考に関する指針」の中で、インターンシップを、「産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられるもの」と定め、「その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある」としている。しかし、経団連の傘下企業以外がこれを守る義務はないし、はっきり言って傘下企業でも守っていない企業が少なくないのが現状である。なぜこのような状況になっているのだろうか。
大きな理由は、経団連が昨年の2016年卒業生の採用から、採用広報、選考のスケジュールを大幅に遅らせたことにある。それまで3年生の12月1日が採用広報の解禁日、4年生の4月1日からが選考開始だったスケジュールを、採用広報の解禁日を3年生の3月1日に、選考開始を4年生の8月1日(17年卒生からは6月1日に前倒し)にしたことにより、3月までの間、学生とコンタクトを取る手段としてインターンシップを活用する企業が大幅に増えたのである。それまでは夏のインターンシップが中心だったのに対して、秋~冬に実施する企業が多くなり、3月から選考に入るような企業は秋、冬のインターンシップを事前選考の場に使うようになったのである。
また、今年から選考開始が8月から6月に前倒しされたことで、採用広報の解禁日から選考開始までが短期化。3月以前に自社を認知、志望してもらう重要性が一層増したことも、インターンシップを採用広報と選考の場として活用する企業が増えた理由になっている。
さらに、こうした時期変更を政府主導で誘導されたため、経団連も採用選考について定めていたルールを強めの「倫理憲章」から「指針」に変更した。実質的に経団連の規制力が弱まったため、企業がインターンシップを選考につなげるようになったと考えられる。経団連がインターンシップについて定めた「5日間以上の期間をもって実施され、学生を企業の職場に受け入れるものとする」とした定義は、ほぼ無視されており、1日または半日、はては2時間程度の「インターンシップもどき」が一気に広がる状況になっている。
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