この夏はやっぱり米国株に注意が必要だ 「マネーの異変」は何がきっかけになるのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

とはいえ、米国株高を維持するには、ドル安基調を維持する必要がある。だが、現段階では対ポンドでの上昇は不可避であろう。すでにイングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は、夏場の金融緩和を示唆しており、これを受けて、ポンド相場は対ドルで下落する可能性が高い。

そうであれば、少なくともドルは対ユーロでは下落することが必要となる。それは可能なのだろうか。希望的にいえば、欧州中央銀行(ECB)に打つ手がほとんどない一方、米国は利上げを見送ることで、相対的にユーロがドルに対して上昇するのを演出することは可能かもしれない。

また欧州のデフレ色が解決されていないこともあり、通貨高になりやすいことも、ドル安につながりやすい。いずれにしても米国株の高値維持にはドル安は必須条件である。万が一、ユーロも対ドルで下落するようであれば、米国株の上昇基調の継続が困難になることは、あらかじめ頭に入れてしておきたいところだ。

米国株はいつ調整が入ってもおかしくない

さらに、企業業績面からの米国株の割高感を指摘する声も聞かれる。そのため、上値を買いたくないとするヘッジファンドも少なくないようだ。実は、彼らは、2月以降の株価の戻りの際にも、割高感を指摘し、むしろ空売りを行ったことで損失覚悟の買戻しを余儀なくされた経緯がある。今回の上昇局面でも空売りを行っているかは不明だが、少なくとも過去最高値を目前にしている今の水準では、一度は売りを仕掛けたいところであろう。

米国株の時価総額が、経済規模(GDP)に対してかなり膨らんでいるのも気がかりだ。このような状況の際には、過去にも大きな調整がみられている。また前回の安値をつけるきっかけとなった2008年のリーマンショックから、すでにもうすぐ8年になろうとしており、日柄的にもいつ調整が入ってもおかしくないだろう。

このように考えれば、一度は本格的な調整が入っても驚きではない。筆者はその動きに常に備えているつもりだ。この夏は、やはり昨年以上に注意が必要と考えている。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事