「糖質制限危険説」は一体どこまで真実なのか 根拠なき脅しに惑わされず正しい知識を持て

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そして、いまだ糖質制限への慎重な姿勢を崩していない日本糖尿病学会の中にも変化の動きが出てきた。6月中旬に糖尿病学会理事長で東大教授の門脇孝医師にインタビューしたところ、「(糖尿病学会の理事長ではなく)一人の糖尿病研究者として、糖質量を総摂取カロリーの4割以下に抑える糖質制限は、大いに推奨される」との見解が示されたのだ。

門脇医師が推奨するのは、平均的な体格の男性で1日の糖質量を150g以下(=白米茶碗2.7膳分)のゆるやかな糖質制限。実際、東大病院では2015年4月から、糖尿病患者の食事として、従来の糖質が1日の総摂取カロリーの5割以上を占めるメニューに加えて、この4割の「低糖質」メニューも用意しているという。

門脇医師は、実は自身も糖質制限の実践者。「安全性への検証が進めば、より自信をもっておすすめできるようになる」とも言及。かつては糖質制限を強固に反対していた学会内において、そのトップが糖質制限を容認したことは大きな意味を持つ。

安全、危険と言い切るにはまだ早い

間違えてはいけないのが、糖質制限を危険だとする根拠がない一方で、同時に糖質制限を20年、30年といった長期で行った場合に本当に安全なのか、それを証明する検証結果もまた無いということだ。さらに、深刻な腎障害を持った人や妊婦など、糖質制限には慎重になるべき人がいる。

ひとえに糖質制限と言っても、すべての人に同じやり方が適当なわけではないことも忘れてはならない。東京イセアクリニック特別顧問の久保明医師は、現在の糖質制限の加熱ぶりに対してこう警告する。「糖質制限を始めるにあたって、今の自分がどのような健康状態で、普段どのような栄養素をどの程度取っているのかという視点が欠如している人が多すぎる」

糖質制限は危険か安全か、という単純な2元論ではなく、そもそも自分の嗜好やライフスタイルに合った方法なのか、そして自分の目指す体型になるために、現在の食事の何をどう変えれば良いのか。そこから考えるのが最短ルートといえよう。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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