経済苦にあえぐ北朝鮮に変化の兆し? 新年の辞で19年ぶりの「異変」
経済強国という言葉は、2012年から北朝鮮メディアを中心にしばしば登場するキーワードだ。「経済強国建設の成果は人民生活で出てこなくてはなりません」と金第1書記は述べたが、「経済強国建設の中に人民生活向上があるのではなく、両者を並列して述べているところに、金第1書記の人民生活向上への並々ならぬ思いを感じさせる」と礒崎氏は言う。
北朝鮮経済は、相対的に重工業の国だ。人民生活をこれ以上悪化させないため、金正日政権末期から軽工業と農業分野の改善・向上が北朝鮮国内では訴えられてきた。
具体的な経済政策の方針は不明
発電所の建設による電力事情の改善や、中国との貿易関係の拡充などによって、首都平壌を中心に少しずつ改善されつつある。だが、金第1書記が指導者となったためにこのような路線に切り替わったのではなく、「故・金正日総書記からの政策の延長線上にある」と、北朝鮮では考えられている。
そのため、「金正日時代にやり残したことを着々と完成させることが重要な政策課題になっているのではないか」と環日本海経済研究所(新潟市)調査研究部の三村光弘部長は言う。権力の完全な掌握には時間がかかる。そのため、経済分野も含めて「金正日の遺訓」という形で物事を進めるのが得策、と考えているようだと三村部長は説明する。
新年の辞でも「農業と軽工業は依然として今年の経済建設の主攻戦線」と言及し、慢性的な食糧問題を克服する必要性を最高指導者として認識しているようだが、新年の辞では具体的にどう「攻める」のかについては一切触れられていない。
2010年の社説では「対外市場を拡大して対外貿易活動を積極的に展開することが示されていた、と礒崎氏は指摘する。それまでよく使われた「自力更生」という言葉も、今回は使われていない。
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