高年収な人ほど「老後貧乏」に陥りやすい理由 「なんとかなる」という甘い算段は危険だ

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老後は誰でも年金と貯蓄の取り崩しという二段構えの生活になります。そんな生活のなかで貯蓄は目減りしていく一方ですが、年金は亡くなるまで毎月安定した収入となります。やはり公的保険は頼りになる制度だと思います。老後の暮らしを安心なものにするためにも、まず国の制度である年金に関する知識を頭に入れてフル活用しましょう。

ところで、あなたは自分がいくら年金をもらえるのかご存知でしょうか?

もし、知らないということであればすぐに自宅に届いているねんきん定期便を確認してみましょう。脱老後貧乏は、老後の収入、つまり自分がいくら年金をもらえるのかを把握することから始まります。

年金だけでは老後生活は乗りきれない

収入が高い人が勘違いしがちなのが、収入が高ければ年金もたくさんもらえると勘違いしている点です。確かに会社員であれば収入が上がればもらえる年金額は増えていきますが、それには上限があります。

一般的な会社員が、退職後もらえる公的年金は国民年金と厚生年金です。国民年金は加入した年数により算出されるので、20歳から40年間まったく未納がなかったとしてもおよそ80万円。これは誰でも一緒です。

一方、厚生年金は負担する保険料によって年金額が増えていきます。厚生年金の年間の年金額の算出は下記の式で計算できます。

標準報酬月額(見込み)× 5.481 ÷ 1000 × 厚生年金加入月数
※ただし標準報酬月額の上限は62万円

たとえば、標準報酬月額30万円で30年間厚生年金に加入した(30年間の平均月収が30万円)とすると、59万1948円が年間の厚生年金額になり、国民年金80万円と合わせて、約140万円となります。

では、仮に上限いっぱいの62万円で38年間働いたとするといくらになるのでしょうか?

標準報酬月額62万円で38年間厚生年金に加入した(38年間の平均月収が62万円)とすると、154万9588円が年間の厚生年金額になり、国民年金80万円と合わせて、約235万円となります(賞与は含まず)。

すでにお気づきだと思いますが、どんな人でも働き始めてすぐに月収62万円ということはないでしょうから、実質的には普通に大学を卒業して働き始めた人であれば、上記のような235万円という数字になることはなく、必ずそれ以下になるということです。

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年金収入は夫と妻の2人分を合わせて考えるものだとしても、現在の年収が500万円であれ1000万円であれ、老後の収入がガクッと落ち、その不足分は貯蓄で補うしかないことは誰でも同じ状況であることが理解できると思います。

ですから、まず

・ 老後の毎月の生活費を見積もる

・ 老後の定期的な収入を見積もる

この2点をしっかり押さえて、不足する老後資金を割り出し、貯蓄計画を立てる。老後貧乏を脱するためには、まず「なんとかなる」という甘い算段を捨てて、行動を起こさなければなりません。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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